『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

過敏性腸症候群の新しい市販薬「セイヨウハッカ油」が発売【2022/3/21~3/25ニュース】

過敏性腸症候群(IBS)改善薬「コルペルミン」(要指導医薬品)が3月24日に発売しました。有効成分は、なんと、オイル。欧州で長年IBS治療に使われてた実績をかわれて、今回日本でも医薬品として発売されたセイヨウハッカ油(ペパーミントオイル)です。1回1cap、1日3回。30 capで2,618 円。

値段はさておき、審査報告書やガイドラインを見ると期待の持てそうなお薬です。

審査報告書によると、セイヨウハッカ油は2020年現在、スイス、英国、ドイツをはじめとする38カ国の国・地域で市販薬として販売されています。コルペルミンは、1983年にスイスで市販薬(薬局販売用医薬品)として承認されたColperminと、規格・試験法を除いて同一の薬だそうです。

海外での使用で最も多かった副作用は下痢・腹痛などの消化器症状でした。下痢、吐血などの重篤な副作用も報告は、一応されていますが、因果関係を含めて詳細は不明です。日本での試験では湿疹などが報告されています。これだけ書くとおどろおどろしいようですが、どんな薬でも様々な報告が一応されるものなので、総合的に見ると、他の薬と比較して特に危険という薬ではないと思います。

日本国内のIBS治療のガイドラインでは、補完代替医療として「有用であり、使用することを提案する(推奨の強さ:弱(合意率100%)、エビデンスレベルA)」としています。効果を示すエビデンスは結構揃っていて、エビデンスやリスク・ベネフィット、コストなどを総合的に考えると、「推奨」するほどではないが「提案」するのは良い(弱い推奨)、ということです。

服用2〜4週間の効果の程度をデータで見ると、改善率が高く、結構、良いのではないかという個人的な印象です。

作用機序は、カルシウムチャネルに作用し、細胞内へのカルシウムイオンの流入抑制、消化管平滑筋の収縮抑制を生じることであり、これはオイルの主要成分であるメントールによるものだそうです。メントール、侮れないですね。

ところで、メントール、ペパーミントは、普段の食事やサプリメントでも摂取されます。過剰摂取になる可能性はないのでしょうか。この点については、審査報告書によると、食事やサプリで摂取される成分量は微量であるため安全性への影響はないと考えらえているようです。ただし、IBSに効果があるように宣伝された一部のサプリには併用が注意とのことです。この点も踏まえて、添付文書には、本剤を使用している間は他のIBSの症状改善薬は服用しないことが記載されています。

ただ、この書き方だとどうなのでしょうか。病院で治療中の患者さんが、補完療法としてコルペルミンを買いたい、あるいは医師から使って良いと言われたと言って購入するケースがあると思います。添付文書の記載表現だと、バッティングしないでしょうか。現場レベルでは気になる部分です。

コルペルミンは、過去にIBSの診断・治療を受けたことがある人が飲める薬です。下痢にも便秘にも使えます。1日3回、食前・食間に飲む薬です。有効性は食後でも変わらないようですが、食事と一緒に服用すると、カプセルが早く溶けて、オイルが胸焼けを起こす可能性があるからだそうです。

取り急ぎ、以上です。

ゼリア新薬は昨年12月に要指導医薬品の西洋ハーブ「ベルフェミン」を発売したばかり。これほど短い期間で2つの要指導医薬品を発売するとは驚きです。