『家庭の薬学』

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調剤の外部委託が市販薬販売に与える影響は?【2022/9/20~9/24のニュース】

今週は日経新聞で「調剤の外部委託、無条件解禁を協議へ 規制改革推進会議」というニュースがありました。調剤業務の話ではありますが、市販薬販売業界にも影響が出るように感じます。

調剤の外部委託、無条件解禁を協議へ 規制改革推進会議: 日本経済新聞

このニュースは、現在保険薬局で行なっているピッキングや一包化などの「対物業務」を外部に委託し、薬局では患者さんとの「対人業務」に集中するというものです。薬を管理しているところと、患者さんに応対する薬剤師が地理的に離れることになります。このような対物と対人業務の分離が、仮に記事にある通りに無条件解禁されると、市販薬販売にはどんな影響があるのでしょうか。

まず考えられるのが、市販薬のネット販売への影響です。現在の市販薬のネット販売は、管理する薬剤師がいて、そこから薬を配送します。例えばですが、ネット販売を管理する薬剤師が店舗Aにいて注文を受け付け、よその店舗Bの薬を配送するということはできません。薬の管理も、利用者の対応も、同じ店舗Aで行うことが原則です。

しかし、処方箋医薬品で、管理と対人対応の分離が認められるのであれば、市販薬販売も同様の形式が許されるようになるかもしれません。そうなると、店舗Aに薬剤師がいて薬の在庫管理をし、実際の注文処理は店舗Bの薬剤師が行う、ということが可能になります。あまり変わりがないようにも見えるかもしれませんが、店舗Aというのは大抵倉庫のような特殊な環境です。そこでしか作業ができないという縛りがなくなると、実務レベルではオペレーションの自由度がかなり高くなります。

また、例えばですが、薬局Aがロキソニンの注文をアマゾンのプラットフォーム上で受け付けて、チェックは薬局Aの薬剤師が行い、ロキソニンの配送はアマゾン薬剤師が管理する物流倉庫から行うことも可能です。薬局Aがロキソニンを送るよりも、地域を選ばず、かつ早く配送できるかもしれません。

また、8月まで新宿駅に展開されていた薬の自動販売機も変わるかもしれません。テレビ電話で遠隔の薬剤師が確認をして、販売機から排出されるという形に近づくでしょう(実現するには外部委託問題以外の法的なハードルが他にもありますが)。

今後の情勢は不透明ですが、調剤業界の話は、市販薬業界にも影響を与えるように思います。