『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

【2022年版】ドラッグストア利用者は絶対知っておきたい市販薬ニュースTOP10

今年最後のブログ更新です。本年も誠にお世話になりました。今年は新しいことへの挑戦をたくさんしました。kurieditsとしての活動では、初めてラジオ出演に挑戦したことが一番の挑戦だったと思います。それから、法人向け研修を提供しているネットパイロティング様の登録販売者向けサイト(法人用)で毎月記事を書かせていただき、こちらも自分にとっては勉強になりました。本ブログを読んで、もっと知りたいと思った登録販売者のかたはぜひ、ネットパイロティング様のI-so-leaningものぞいてみてください。

前置きはこれくらいにして、今年も行ってみましょう、2022年の市販薬ニューストップ10!これを読めば、今年のニュースはばっちりです!

10位 セルフメディケーション税制対象商品に漢方薬などが追加

1月からセルフメディケーション税制対象医薬品が大幅に拡大されました。アセトアミノフェンや漢方薬が入ったことが大きいですね。一方で、対象商品から除外された薬もありました。税制対象医薬品は厚労省のサイトで随時更新されています。1月の時点では対象リストに掲載されていなかったものも、その後、追加されているようでした。このリストはどのように管理されているのか、ちょっと気になるところです。メーカーが申請をしてリスト入りする、という話を耳にしましたが、詳細は未確認です。

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9位 過敏性腸症候群の新しい薬「セイヨウハッカ油」が発売

過敏性腸症候群(IBS)の薬としてコルペルミンが3月に発売しました。コルペルミンの成分はセイヨウハッカ油です。海外では伝統的にセイヨウハッカ油が用いられており、今回、日本でも、病院では処方されない、市販薬だけの薬として発売されました。日本国内のIBS治療のガイドラインでは、補完代替医療として「有用であり、使用することを提案する(推奨の強さ:弱(合意率100%)、エビデンスレベルA)」としています。過敏性腸症候群への直接の効果をうたった市販薬は「セレキノンS」が有名で、2年前に第二類医薬品になりましたが、市場はそれほど拡大していない印象です。コルペルミンは新たな治療選択肢として有用な薬だと思いつつも、市場のせいか、認知度のせいか、私は今年一度も売りませんでした。なお、こちらは要指導医薬品です。

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8位 休むための風邪薬、新コンセプトの「ベンザブロックYASUMO」が発売

頑張るための風邪薬から、休むための風邪薬へ、といったところでしょうか。新しいコンセプトの風邪薬が発売しました。カフェインを入れず、眠気のでる成分ジフェンヒドラミンを、あえて配合させた風邪薬です。薬効成分の構成には、薬剤師目線ではやや議論があるように思いますが、社会の風潮を反映させた薬という点で8位にしました。ジフェンヒドラミンは海外でも睡眠を補助する薬として使われています。 米国では、日本でもおなじみの「タイレノール」ブランドに、就寝時の痛みを和らげるための「Tylenol PM Extra Strength」(1回アセトアミノフェン1000mg+ジフェンヒドラミン塩酸塩50mg)という配合剤があります。 タイレノール以外の有名ブランドからも「Advil PM」(1回イブプロフェン200mg+クエン酸ジフェンヒドラミン38mg)という製品が出ています。ただ、こうした睡眠と鎮痛を目的とした市販薬は今までほとんど日本の市販薬には、なかったように思います。

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7位 日本初!「市販薬販売機」が新宿駅に登場

大正製薬が国主導の実証試験の一つとして、新宿駅構内に販売機を設置しました。私も利用してみました。おもしろかったです。薬の販売機については、海外の取組み事例なども興味深いので、ご関心がある方は、こちらの過去記事をどうぞ。

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6位 医療用でおなじみの胃薬成分「イトプリド」が市販薬に

病院で慢性胃炎に処方されることのある、胃薬成分イトプリドが、「イラクナ」という製品名で市販薬として9月に発売しました。非常にメジャーかつ古典的な成分が、市販薬になったのは、大きなニュースだと思います。イトプリドは消化管の機能を促進させる成分です。病院では慢性胃炎などに使われてきました。慢性的な胃の不快感がある人は、一度は受診しましょう。市販薬はずっと飲み続けるものではないことをご承知おきください。こちらも要指導医薬品です。

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5位 ツムラの市販薬に大建中湯・麻黄附子細辛湯などラインナップが追加

2月にツムラの市販薬に5品目が追加されました。市販薬ではなかなか見かけない漢方薬もあり、選択肢の幅が広がったと言えます。もっとも、ドラッグストアではツムラよりもクラシエのほうが置いてある店が多いですが。今回ツムラから追加されたのは、大建中湯、抑肝散、清心蓮子飲、清肺湯、麻黄附子細辛湯。大建中湯と麻黄附子細辛湯は市販薬としては珍しいと思いますが、漢方治療においてはいずれも非常にメジャーな漢方薬です。

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4位 新たなアセトアミノフェン製品が続々。タイレノール以外にも選択肢

新型コロナの感染拡大で一躍注目を浴びた解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン。感染拡大初期に置いて、ナンバーワンブランドのタイレノールは多くの店で瞬く間に売り切れる事態になりました。それまで市販薬ではアセトアミノフェンは見向きもされませんでしたが、こうした状況を受けて近年では他のメーカーも徐々にアセトアミノフェン製品を発売するようになりました。今年はアラクス(ノーシンブランド)が5月にアセトアミノフェン単剤を、興和も9月にアセトアミノフェン単剤を発売、大正製薬が10月に「ナロンm」を発売しました。特に、ナロンmはアセトアミノフェンに胃保護成分を加えるなど、単味成分が主流だったアセトアミノフェンにも、差別化の波を感じさせます。その成分追加に意味はあるのか?という問題も同時に出るでしょう。

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3位 え?あの薬が?入荷しない薬たち

今年は様々な理由から、入荷しなくなってしまった市販薬がありました。医療用医薬品の需要増、供給不安定のアオリもあるでしょう。代替えがきく薬もあるので、店頭でご相談ください。

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2位 新型コロナ用抗原検査キットが発売

もう、これが実質1位ではないかと言えるくらい、お客様からの問い合わせが多い一年でした。それもそのはず、なんと、民間調査会社による、今年一年で小売で売れたもの調査で、あらゆる食品や雑貨を押しのけ、医薬品の検査薬が一位だったんですから(withコロナを象徴? 「2022年、売れたものランキング」 |株式会社インテージのプレスリリース)。今年8月から9月にかけて、厚労省の承認を受けて新型コロナの抗原検査キットが市販薬として発売されました。生活者にとってはありがたい話でしたし、公衆衛生の別の側面から見ても、研究用と称する検査キットが市場から姿を消した(一部でまだ残ってますが)ことがよかったと思います。検査キットはヘルスリテラシーの問題・課題を社会に投げかけました。このブログを書きながら、私は今も毎日、抗原検査キットを売っています。

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1位 新型コロナ・インフルエンザ同時検査キットが発売

インフルエンザが自分で検査できるようになるなんて、誰が想像したでしょうか。2位の新型コロナ検査キットと、こちらを、どちらに1位にするか迷いましたが、個人的なインパクトの大きさで、同時検査キットを1位にしました。12月29日現在、マツキヨ、日本調剤など一部のサイトでは通販されています。リアル店舗ではなかなか見かけませんが、ただ薬局では、医療用の同時検査キットを発売しています。これは、同時検査キットの市販化に伴い、医療用も薬局で販売することが可能となったためです。インフルエンザが自宅で検査できるようになると、どんなことが変わるのか。少しずつ、セルフケアの形が変わってくると思います。社会にも変化を与えるかもしれません。

市販薬の同時検査キットの販売方法は、資格者向けに厚労省から事務連絡が出ています。関係者の方はご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/001022692.pdf

圏外でも大事なニュース

この他にも、いろいろなことがありました。

●肥満対策の薬「アライ」が承認。発売は来年でしょう。大きなニュースですが、発売前なので今回のトップ10には入れませんでした。

●ヨードの点眼剤、サンヨードが市販薬になりました。特殊な薬なので、置いてある店は少ないでしょう。

●初のウワウルシだけの生薬製剤、「ハルンケアベルベリー」発売(第二類医薬品)。

●市販薬の乱用対策強化が決定。実施は来年を予定しています。これも来年の大きなニュースになるはずです。だって、パブロンが1人1個しか買えなくなるのですから(本来、当たり前ですけど)。

●年末に中国のコロナ感染拡大を受けて、日本でも風邪薬の爆買いが。

●そして、数年後には、薬剤師が遠隔で面談してロキソニンを売れるようになるという話も出てきました。薬剤師が販売店に常駐しなくて済むかもしれません。

●コロナにイソジンが良いと言っていた、大阪府知事。うがい薬研究は今年ひっそり終了していいたことを、年末の読売新聞が報じていました。そうですか・・・。

 

以上、今年の重大ニューストップ10でした。いかがでしたでしょうか。ご自身の日常生活に直結するニュースが、1個や2個はあったと思います。来年も何が起きるのか楽しみですね。本年もブログと活動を応援してくださった全ての方々に感謝します。来年もご愛顧のほどお願い申し上げます。