『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

第4回 医薬品の販売制度に関する検討会 が開催【2023/5/15~5/19のニュース】

今週は市販薬の新商品情報はありませんでした。代わりに、最近のSNS上で見かけた市販薬に関連する情報をまとめておきます。

まず、国立精神・神経医療研究センターから薬物依存に関する2022年の研究報告です。数年に一度公表される、大きな研究報告です。今回2022年の報告では、薬物の中でデキストロメトルファンが乱用薬物として浮かび上がってきました。これは2020年の前回調査では見られなかったことで、2021年にメジコンが市販薬として販売されたことと無関係ではないだろうというの研究者の考察にあります。他にもさまざまな研究結果がありますので、ご興味ある方は以下のリンクをご確認ください。

https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/shimane2022.pdf

こんにち、市販薬のネガティブな研究やニュースを見つけることは、そう難しいことではありません。

2022年の研究で、仙台の病院に救急搬送された患者の原因薬物が、最も多いのは市販薬の解熱鎮痛剤・風邪薬で、次に医療用医薬品のフルニトラゼパム、エチゾラムが続くという報告があります。

Eleven-Year Trend of Drug and Chemical Substance Overdose at a Local Emergency Hospital in Japan - PMC

最近では性犯罪にも使われています。市販の咳止めを使って猥褻行為をした疑いで大学生が逮捕されています。

市販の咳止め薬を約40錠飲ませたか…20歳女性を抵抗できなくしてわいせつ行為の疑い 大学生の男2人逮捕(東海テレビ) - Yahoo!ニュース

乱用には、意図的な使用と、意図的ではない使用の2種類があります。意図的である場合は、防ぐことが難しいでしょう。かといって、手軽に購入できることが、犯罪や事故につながっていることも否定できません。規制にはメリット・デメリットの議論が必要です。乱用される医薬品を規制の対象としたところで、多くの方々の実生活には影響はしないのではないでしょうか?市販薬をしょっちゅう飲んでいる、という人は不便でしょうが、そういう方は、そもそも市販薬の使い方を見直していただくのが先だとも思います。

4月から市販薬、特に風邪薬の販売規制が強化されました。現場では手間が増えていますが、頻繁購入の抑止には一役買っているというのが私の実感です。

 

さて、もう1つ別の話題です。厚労省で医薬品の販売制度に関する検討会が17日に開催されました。

第4回医薬品の販売制度に関する検討会 資料

この検討会で注目したい争点は2つあります。1つは、遠隔で医薬品の在庫を管理することの妥当性について。もう1つは、ネットで要指導医薬品を販売することの妥当性についてです。いずれもこれまでの議論を踏襲した形での話です。前者は自動販売機などの、これまでにない販売方法への規制緩和につながるでしょう。後者はすでに第一類医薬品がネット販売されていて、しかも医療用医薬品さえもオンラインで服薬指導されている中で、なぜ要指導医薬品だけがネット販売禁止なのかという議論です。おそらく要指導医薬品も、いずれはネット販売が可能になるのだと思います。その時に、第一類医薬品のようにメールでのやり取りで良いのか、あるいは、テレビ電話のようなものを用いることが義務付けられるかどうか、という議論になりそうです。

これら2つの争点に共通するのは、消費者にとって市販薬へのアクセスを良くするという視点です。安全性の部分はデジタル技術で担保します。しかし、ここで考えなくてはいけないのは、デジタル技術の活用=安全性が高まる、という訳ではないということだと思います。販売側に適正販売の意思がなくては、デジタルデータも宝の持ち腐れです。その部分の議論が、ほとんどないように私は感じています。

余談ではありますが、当会議では、市販薬のネット販売の現状についても触れられていました。発毛・育毛剤は20%がネット経由の販売ということです。私が知る限りでは、特定の発毛剤はこれよりもずっとネット率が高いですが、傾向は概ね合っていると思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001096949.pdf

 

最後に、今週金曜日に日本医療情報学会がAIをテーマにしたシンポジウムを開催しました。その内容をかいつまんで紹介します。

・最近のネイチャーに掲載された、医療分野でも基盤モデルを作れるのではないかという話。現実感ありそうですね。 Foundation models for generalist medical artificial intelligence

https://www.nature.com/articles/s41586-023-05881-4

・AIの方が医師の解答よりも質的に勝る(評価者は医師らしい)というデータ

Comparing Physician and Artificial Intelligence Chatbot Responses to Patient Questions Posted to a Public Social Media Forum

・診断だけではなく、医師業務の2/3を占める書類作業でAIが利活用できるのではないか

Doctors Wasting Over Two-Thirds Of Their Time Doing Paperwork

マイクロソフトが昨年買収したnuance社では実装も始まっている

www.youtube.com