健康被害が問われている小林製薬の「紅麹」の騒動は、サプリメントだけでなく日用品にも影響がでてきました。
歯間ブラシの「糸ようじ」など同社のオーラル製品が、日本歯科医師会の推薦から外れていたことが今週発表されました。推薦の文言のついた製品の返品を受け付けるとともに、販売が一時休止するようです。日本歯科医師会が推薦を外したのは、同会の推薦基準を満たさないと判断したためと報じられています。
日本歯科医師会は推薦取り消しの理由について、紅麹(こうじ)原料を含むサプリメントの健康被害問題を巡る原因究明や再発防止策の策定が完了していないことを受け「企業として製造工程の安全管理の観点から推薦する基準を満たしていないと判断した」と説明する。(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF138110T10C24A9000000/
さて、そんななかで今週発売された薬がありますので紹介します。
小林製薬「キュアレア ドライ」9/11新発売
この製品、新製品扱いにはなっていますが、実は2017年9月に発売した「ヒシモア」と、成分・添加物の表記が完全一致しています。ヒシモアは足のカサカサなどを治す薬として発売されていました。今回発売したキュアレアドライは、顔の乾燥をメインとしています。パッケージとコンセプト、商品名を変更しての再販なのでしょうか。
このような新製品は、買う側として「アリかナシか」。利用者に聞いてみたいところです。個人的には「アリ」が過半数を上回る気がしますが。
いち薬剤師としての立場でいえば「ナシ」です。薬剤師が薬そのものを評価する際のものさしは、「効果(副作用含む)」や「使いやすさ」です。新商品が出たとなると、まずこの2項目と既存品を見比べて、新規ポイントを評価します。ところがキュアレアドライは、ヒシモアとまったく同じです。もし、ほかのメーカーも、こうしたやり方で次々と”新製品”を発売したらどうなるでしょう。なにがどう新しいのか、わけがわからなくなってしまいます。値段も気になります。ヒシモアの発売当時の価格は30gで1400円、キュアレアドライは8g1000円です。昨今の物価高の影響を加味しても、同じ成分であることを考えればおどろくべき価格差です。
ただ、立場によってアリナシは分かれるでしょう。お店の販売員としての立場なら、「アリ」かもしれません。同じ成分でもパッケージが変わることで、お客さんにすすめやすくなります。足のイラストのついた「ヒシモア」のままでは、「顔につかってください」とはいいにくいでしょう。説得力も損なわれてしまいます。
メーカーの立場でも「アリ」かもしれません。成分には自信がある。お客さんに届けたい。そのために、パッケージやコンセプトを変える。ここだけ切り取れば、通常の企業努力の範囲です。
では利用者はどうでしょうか。気になるところです。
それはさておき、「キュアレアドライ」の特徴にも触れておきます。ヘパリン類似物質の塗り薬が数多くある中で、本品はパッケージに「目のまわりにもつかえる」と明記されています。昔は上記成分を使った薬は、目の周りには使わないでくださいと書かれていました。いまでも、「HP クリーム」や「ヒルマイルド」は目の周りがNG表記です。最近は目の周りに使えることを謳う製品が増えたと思います。たしか、メーカーが目の周りの安全性も確認したうえでそのような表記が増えたのではなかったでしょうか。
キュアレアドライは既存品のキュアレアとはだいぶ成分が異なります。乾燥が気になるひとは、キュアレアドライのほうがおすすめです。
「キュアレアドライ」 ヘパリン類似物質0.3gジフェンヒドラミン0.5gガンマ-オリザノール1.0g
「キュアレア」 ウフェナマート5gジフェンヒドラミン1gグリチルレチン酸0.3g
そのほか、新商品も紹介します。それにしても9月は新商品が多いですね。
総合風邪薬「ストナEX錠」9/12新発売。
"臨床試験を実施し、有効性と安全性が確認されて開発された独自処方のかぜ薬"とのこと。最近の市販薬は臨床試験をおこない、ウェブサイトで一部公開しているものがあります。おそらく見ている人はほとんどいないだろうけれど、これはどういう傾向なのでしょう。同じく臨床試験を公開しているパブロンも見るとなかなかおもしろいです。同一条件ではないので、製品の優劣はつけられません。念の為。
https://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2024/240912/
「コルゲンコーワ総合かぜ薬」9/6発売
先週発売でした。咳止め成分はコデインではなくデキストロメトルファンを使用。5歳から服用可。ところで、この製品とは別に以前から「コルゲンコーワ総合感冒薬」という商品が、まったく同じ成分で存在します。なんぞ?と思って調べると、医師の平さんのデータベース(https://www.plamedplus.co.jp/otc/)によれば、こちらはコスモス薬品専売とのこと。そうなのか。なんと素晴らしいデータベース。
https://www.kowa.co.jp/news/2024/press24090601.pdf
「ケラチナミンコーワ ヒビエイドα」9/6発売
既存品に「α」と名前に付け加えられた製品で、成分はピリドキシン(ビタミンB6)が加わりました。ケラチナミンは昔ながらの尿素クリームの印象が強いですが、ヒビエイドに尿素は使われていません。成分は全く別物。成分の40%がグリセリン。