『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

マイコプラズマが拡大し、風邪薬需要は冬の時代が終わる【2024/11/4~11/8のニュース】

厚労省は今週、インフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表しました。予防接種はお済みでしょうか。体調管理にご注意ください。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241108/k10014632911000.html

さて、最近は感染症が話題です。なかでもマイコプラズマ肺炎は、現在の統計が開始された1999年以降で過去最高の流行をみせています。

コロナ、インフルエンザ、マイコプラズマと感染症のオンパレードです。小児科が近い薬局ならこれに子供の溶連菌がプラスされるでしょう。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1539072

マイコプラズマ肺炎は細菌の感染によって発症します。感染から発症までの潜伏期間は2〜5週間です。発熱や倦怠感、乾性の強い咳症状などが続いたあと、咳だけが3〜4週間、あるいはそれ以上残ります(この時点で湿性の咳に変化することもあります)。多くの人は風邪のような症状か気管支炎を経て症状が徐々に軽くなりますが、一部の人は重症化してマイコプラズマ肺炎と呼ばれる肺炎状態になります。気管支炎どまりの場合は抗菌薬(抗生物質)は原則として不要です。この場合は一時的な咳止め薬などで表面的な症状を抑えるしかありません。そのうち自然と治ります。肺炎症状には抗菌薬を使います。

市販薬で対処できることは、咳や咽頭痛などの表面的な症状を抑えたり、解熱剤を使うことくらいです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mycoplasma.html

マイコプラズマは接触や飛沫(咳)などで感染します。感染力はインフルエンザほど強くはないものの、家庭や学校で広がることがあります。そのため、学校保健安全法で、急性期(発症初期)は出席禁止となります。

日本マイコプラズマ学会理事の皿谷健医師(杏林大学呼吸器内科教授)によれば、「乾いた強い咳が1週間以上」「38〜40度の高熱が3日以上」「かぜ薬を飲んでも治らない」ことが受診のポイントと報じられています。

咳が非常に強くて発熱があり、そのうえ家族や学校で似たような症状が見られる場合は、いまの時期であればマイコプラズマを疑ってよさそうです。

https://www.nhk.jp/p/kyonokenko/ts/83KL2X1J32/episode/te/8V194ZL3RG/

予防はマスク・手洗い・換気です。これらは風邪やコロナ対策にもなるでしょうから、あらゆる感染症が流行している現状では、一石何鳥もの効果のある対策です。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001320926.pdf

ところで今週、第一三共ヘルスケアが消費者調査を発表しました。この調査によると、風邪をひいた時の対処方法は、「市販薬で対処する」が最も多くて44%、次が「医療機関を受診する」で33%でした。

インテージの調査によると、風邪薬の販売額はコロナが起きたときに前年比64%まで下がり、その後数年間はコロナ前よりも低い水準で推移しました。しかし2023年度にはコロナ禍前よりも高水準となり、市販薬販売の”冬の時代”が終わりました。コロナ時の手洗い・マスク・うがいの徹底が緩和されて、人流が再開したことも加わり、感染症にかかりやすくなっていることは想像に難くありません。コロナ拡大時には風邪薬需要は落ちて、パンデミックが終わると風邪薬の需要が高まるというのは、なんとも皮肉な話です。いまのマイコプラズマ感染の背景にも、衛生対策の緩みがあるという指摘があります。

手洗い・うがい・マスクで、風邪薬需要に、もう一度冬の時代を。