家庭の薬学

自分に合った市販薬を選びませんか?

リバウンドが少ない?新しい充血除去薬「マイティア ルミファイ」登場【2025/1/20~1/24のニュース】

市販薬市場に、新しい成分の登場です。充血除去の目薬「マイティアアルミファイ」が、3月14日に発売すると発表されました。血管収縮成分「ブリモニジン」を配合した初めての市販薬です。要指導医薬品なのでネット購入不可、薬剤師による対面説明が必須です。また、コンタクトレンズ装着しながらは使用できません。複数回使う場合は、4時間以上間隔を空けて、1日4回まで。

https://www.senju.co.jp/sites/default/files/content_news/2025-01/JPN_20250123_0.pdf

効能は目の充血(結膜充血)の除去です。血管を収縮することで、白目の赤み(血管)を目立ちにくくなります。しかし、そもそも赤くなるのは血管を通じて目に栄養を与える目的もあるはずなのに、むりやり血管を収縮するのは良くないのではないかという懸念があります。また、点鼻の血管収縮剤がそうであるように、リバウンドが起きやすくなる可能性も考えられます。

そういうわけで、個人的には、いまどき血管収縮剤?と思っていたら、メーカーから次の説明がありました。

「ブリモニジン酒石酸塩」は、主に結膜の血管の静脈および細動脈を収縮させることで結膜充血に効果をあらわします。この作用により、細胞への酸素や栄養分などの運搬に大きな影響をおよぼすことなく結膜充血を除去することが期待できます。(プレスリリースより)

目薬の充血除去成分は他にもナファゾリンやテトラヒドロゾリンなどがあります。栄養素の運搬に大きな影響を与えることがないとして、それはブリモニジンに特有のことなのか、そうではないのか。

さらに調べると、審査報告書に、こんな情報がありました。

既存の血管収縮薬は、アドレナリン α1受容体を介して充血除去作用を示すが、反復使用後にみられるリバウンド(反跳性充血)やタキフィラキシー(反応性の低下)により、効果の減弱あるいは消失などが起こることが知られていること

 リバウンドは、既存の血管収縮薬がアドレナリン α1受容体を刺激して結膜の動脈に 対する血管収縮作用を生じた結果、局所粘膜組織の酸素分圧が低下し、恒常性維持の ためのネガティブフィードバックとして血管拡張物質が放出されることにより、引き起こされるものと考えられており、アドレナリン α1受容体作動薬に比べ細い動 脈及び静脈に作用するアドレナリン α2受容体作動薬は、結膜酸素分圧の低下は起こ りにくいと推察されること  タキフィラキシーの発現にはアドレナリン α1受容体の細胞内陥入によるダウンレギ ュレーションが関与していると考えられることから、アドレナリン α2受容体作動 薬ではタキフィラキシーによる効果の減弱や消失を引き起こさない可能性があること

 医療用医薬品における本薬の濃度では、過剰のブリモニジンが血管内皮細胞又は ナプス前神経終末のアドレナリン α2受容体、さらにはアドレナリン α1受容体まで刺 激した結果、ネガティブフィードバックによりリバウンド充血を引き起こす可能性 がある 4)が、本剤は医療用医薬品より低濃度であることから、受容体に対する作用 は小さく、リバウンド充血は起こりにくいと考えられる

ようするに、他の血管収縮剤とは、作用ポイントが異なるので、リバウンドが起きにくいうえに、細い血管に作用しやすく栄養運搬を過度に邪魔しないと考えられるということでした。

実臨床でどうかという話はさておき、これはこれで本品最大の特徴としたいと思います。

 

目の充血は意外な怖い病気が隠されていることがあります。この目薬で充血が抑えられて、結果として病気の発見が遅くなることがないように、数日のみの使用にとどめておくべきです。

また、充血の薬なれど、すべからく使用してよいわけではありません。充血には「結膜充血」と「網毛充血」があります。白目の周辺(外側)が充血しているなら網膜充血です。徹夜による眼精疲労からくる充血であれば様子見でよいですが、炎症が起きているサインとしてめやになどが伴う場合は結膜炎の可能性があるので受診が良いでしょう。感染性の結膜炎はほうっておくと周囲にうつります。これに対して「網毛充血」は黒目の周囲が充血するのが特徴です。黒目(角膜)に傷がつき細菌などに感染した状態で、痛みが伴うこともあります。こちらも病院案件です。

このように充血の背後にはさまざまな病気の可能性があります。実際、安易に充血をセルフケアで対処しつづけることの危険性は、マイティアルミファイの審議においても話題に上っていました。

そもそも、このブリモニジン、じつは医療用では「アイファガン」という名前で緑内障治療に以前から国内では使われている医療用成分です。それが昨年6月、ブリモニジンを継続使用していた患者に角膜混濁が発生することがあるとして厚労省から注意喚起がなされました(定期観察しながら使用するには問題ありません)。マイティアルミファイは、アイファガンよりもずっと低濃度なので、角膜混濁リスクはほとんどないと考えられますが、セルフケアとして何日も使い続けるような商品ではないということは、わかっていただけるのではないでしょうか。

結論、短期に上手にお使いください。お値段もわりとお高めですし。2.5mLで税込2178円、5mLで同3,828 円。

 

参考「結膜充血」と「網毛充血」

https://www.senju.co.jp/consumer/mytear/mytearstyle/eye-trouble/5#item639

審査報告書

https://www.pmda.go.jp/otc/2024/O20241022001/380086000_30600APX00187000_Q100_1.pdf

審査議事録

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47139.html

アイファガン 安全性情報 2024年

https://www.mhlw.go.jp/content/PMDSI_No411.pdf