とてつもないスピードで、セルフケアの時代が本格到来です。今週の3つのニュースを紹介します。
①エスエス製薬がED治療薬をスイッチ申請(つまり、勃起不全治療薬が市販薬になる)
https://www.ssp.co.jp/news/2025/20250523/
業界紙で報じられたのは今週ですが、発表自体は先月23日になります。
②エーザイが市販薬のパリエットを発売
https://www.eisai.co.jp/news/2025/news202541.html
市販薬として国内初となるPPIの胃薬です。要指導医薬品なので、薬剤師による安全確認が必要です。
③政府が次年度からOTC類似薬の一部を保険外にすると報じられる
上記2つも十分大きなニュースなのですが、それに輪をかけてどでかいインパクトを持つのがこのニュースです。
6日、自民党と公明党、そして日本維新の会が行った社会保険料の負担軽減についての協議。保険適用で市販薬より安く手に入る医薬品、いわゆる“OTC類似薬の見直し”など2026年度の骨太の方針に反映することが確認された。
https://news.yahoo.co.jp/articles/909041609a48db2230a76143e8811cfe9971a1de
詳細はこれからのようです。現時点の個人的なイメージでは、たとえば、花粉症などの症状にアレグラを処方していたとすると、アレグラは3割負担ではなく実費になるというものです。可能性は低いですが、市販薬として購入してもらうという方法も出てくるのかもしれません。
生活者としては、このニュースをどんなふうに受け取るといいのでしょうか。
たとえば、フェキソフェナジンが1錠12円だとします。56錠(1日2錠で4週間分)だと672円になります。3割負担なら200円程度だったものが、一気に672円になると、高く感じるでしょう。そうはいっても、薬だけでみれば、市販薬よりは安いままです。市販薬ではアレルビという商品名で、56錠1300円ほどで販売されています。
SNS上では「アレグラが保険がになったら、ビラノアに処方がシフトするだけでは?」という医療従事者の声がありました。どういうことかというと、アレグラの類似の薬であるビラノアの薬価は48.9円。4週分(1日1錠)だと1369円なので、3割負担だと410円ほど。つまり、患者負担はビラノアのほうがい軽くなります。しかし、これでは、国の医療負担は従来よりも増えることになります。
患者利益を考えると、ビラノアを選択することが合理です。しかし、今回の制度が、医療費抑制だとすると、アレグラからビラノアにシフトすることで医療費は増加するので、本末転倒の政策になります。
アレグラ(フェキソフェナジン)のように医療用と市販薬の両方で存在する薬は、安くて効き目が確立されている、いわば費用対効果の高いものが多くあります。そうした”優秀な薬”を選ぶことが生活者負担になるというのは、ちょっと釈然としないかもしれません。
政策運用の腕の見せ所だと思います。