製薬メーカー「大幸薬品」が、下痢止め「正露丸」の新しい研究成果を発表したことで株価が急伸した、というのが今週のニュースです。
研究成果というのはこうです。日本国内の食中毒の原因として多くを占める寄生虫「アニサキス」。正露丸の成分である「木(もく)クレオソート」がアニサキスによる痛みに有効であるということは以前から一部の研究で指摘されていました。
今回、大幸薬品と国立感染症研究所による研究で、マウスを用いて木クレオソートによってアニサキスの活動が抑制されたと報告されました。動物実験で効果が確認できたのは初めてです。
正露丸の主成分「木クレオソート」がアニサキスに与える影響 大幸薬品と国立感染症研究所が動物実験での検証に成功
もっとも、これが私たちの生活にどれだけ有効かがわかるのは、まだまだこれからでしょう。これにはアニサキスの食中毒について少し説明が必要です。
アニサキスによって引き起こされる症状は2つあります。ひとつは、アニサキスが消化管に侵入することによって生じる物理的な痛みです。これは「アニサキス症」といいます。
もうひとつは、アニサキスによる免疫アレルギー反応で、食中毒とは異なり、蕁麻疹や呼吸困難などを引き起こします。これは「アニサキスアレルギー」といいます。
いわゆる食中毒とよばれるものは前者の「アニサキス症」です。アニサキス症は寄生虫の活動による物理的な痛みなので、木クレオソートで動きを抑えることは痛み抑制に効果があるといえます。アニサキスは人間の体内では長く生きることができないので、そのまま数日で死ぬと考えられます。
しかし、いまのところは、受診をして外科的に取り除くことが、もっとも早くて確実な治療法とされています。応急処置として正露丸を飲んで受診することには問題はない(むしろ良い)とは思いますが、痛みをごまかすことで受診を先延ばしすることにもなるかもしれません。
今回の論文では、アニサキス食中毒の場合、すぐに受診はできない場合の受診までの第一洗濯薬として有望であると述べています。それはそのとおりだと思います。木クレオソートでアニサキスの動きを抑えることで、医師の外科的な処理も容易になるとの見方も示しています。
あとはそもそも、薬で受診を先延ばして良いものなのか。ここは実際に処置をする消化器の医師の見方を知りたいところです。
参考