ED治療薬が市販薬化に向けて一歩コマを進めました。世間的には大して是非を問われることもなく、すんなり承認という印象です。年単位で議論していつまで経っても全国での販売が解禁されない緊急避妊薬とは大違いです。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250918/k10014926761000.html
今回市販薬になる予定の「シアリス」は、タダラフィルという血管を拡張することで血圧が下がる成分です。そのため、血管系、心臓病などを抱える人は要注意となり、おそらく市販薬では禁忌(使用不可)扱いになると思われます。心筋梗塞を含む死亡例の有害事象(この薬の副作用かは不明)も報告されており、市販薬の中では、かなり扱いに慎重さが求められる製品であることは間違いありません。
それにしても、実にアッサリと厚労省の部会は了承したものです。緊急避妊薬は、不適切な使用や悪用の懸念があるとされて、市販化を認めてきませんでした。
では、ED治療薬はどうなのでしょうか?業界の常識で考えると、風俗街近くのドラッグストアでは購入者が多くなるだろうと推察されます。精力剤という名の栄養ドリンクがたくさんドラッグストアに並べられている理由を考えてください。EDではなくとも、この薬を使いたいと思う男性はたくさんいます。これは不適切な使用にならないのでしょうか。悪用の懸念は?(※)
ここで言いたいのは、彼我の承認スピードの差分です。いったいなんでしょうか?そこに性差の要因がないといえますか?
男性に理解されにくいのは、緊急避妊薬だけではありません。新商品情報を1つ。月経過多の女性向けの漢方薬「チラック」(第2類医薬品)が9月17日発売しました。芎帰膠艾湯という漢方薬。かなり珍しい製品です。血の巡りを整えるイメージの漢方薬ですね。背景になにかしら病気がないことを前提として使うセルフケアの薬という点に注意でしょう。症状が重い場合は一度受診がセオリーです。
https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2025/20250903_02/
開発担当者の女性のコメントを引きます。
「開発にあたっては、特に男性の決裁者には女性特有の悩みを理解してもらうことに苦労しました。しかし、SNSやネット上でも月経過多で悩んでいる声が多く、また「生理の血が漏れてしまいそうで不安」といった切実な声など、日常生活に支障をきたしている現状を伝え続けたことで、製品化を実現することができました」
反対されたということではないかもしれませんが、男女の性差が理由となって、理解を得るのに苦労したことがうかがえます。
※今回のED治療薬の販売条件が「医師からEDの診断を受けている」ということでしたら、多少は安全性が担保されるのかもしれません。いまでも市販薬の中にはそのような縛りのある製品があります。たとえば、口唇ヘルペスの薬には「過去に診断を受けたことがある」という条件が、肥満治療薬の「アライ」や脂質異常症の「エパデール」には健康診断の数値の条件がありますが、証明書を求める義務はありません。お客さんの自己申告に従って販売する店もあるでしょう。