家庭の薬学

自分に合った市販薬を選びませんか?

市販化「アスベリン」と濫用事情【2026/1/12~1/16のニュース】

咳止めの大型新人が登場します。

シオノギヘルスケアが、「アスベリン®せき止め錠 Pro20」の製造販売承認を15日付で取得したと発表しました。アスベリンの成分「チペピジン」は、いまから半世紀以上前に熊本大学薬学部が開発した薬です。咳止め成分として有名ですが、近年は精神科領域への応用も研究されています(2018年までの科研費ではADHDへの臨床効果は残念ながら認められなかった模様。海外のRCTでも微妙な結果)。

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19712/

Efficacy and safety of tipepidine as adjunctive therapy in children with attention-deficit/hyperactivity disorder: Randomized, double-blind, placebo-controlled clinical trial https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31294924/

 

咳止めとしてのチペピジンは、延髄の咳中枢を抑える働きや、気管線毛の運動を促す働きによって、咳を起こりにくくします。臨床で長年使われてきた安全性の高い薬ですが、咳中枢を抑える作用によって、眠気が起こることがありますので、おそらく服用時には車の運転は禁止とする但書になるでしょう。

https://www.shionogi-hc.co.jp/content/dam/shc/jp/news/2026/01/20260116.pdf

今回のニュースは、小さなお子様のいる家庭であれば、「あのアスベリンが市販薬になるの!?」と身を乗り出したくなるかもしれません。アスベリンはクリニックで子供の咳症状に最頻度で処方される薬だからです。医療用のアスベリンには、錠剤、ドライシロップ、シロップといった複数の剤形があり、このうち主にシロップが1歳未満から処方されます。

今回、市販薬として登場するアスベリンは錠剤です。そのため、使えるのは「8歳」からです。未就学児には使えませんのでご注意ください。

市販薬の咳止めは、コデインやデキストロメトルファンなどのように、依存性が問題視されています。アスベリンの成分「チペピジン」はどうでしょうか。いまのところ、その心配は少なそうです。というか、この成分は純ドメなので、おそらく海外の自由市場で大量に使われているほかの咳止めとは異なり、国際的なデータに乏しいというのが現状だと思います。論文も日本人のものが多いですしね。

Tipepidine increases dopamine level in the nucleus accumbens without methamphetamine-like behavioral sensitization

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25687844/

チペピジン自体は市販薬にすでに用いられている成分です。風邪薬のパブロンシリーズでは、小児用にも、大人用にも使われています。たとえば「パブロンLX」は15歳以上で使える風邪薬で、チペピジンは1回25mgです。新発売するアスベリン錠は1錠20mgだと思いますので、2錠飲むのかもしれません。アスベリン錠は単剤で、1回量がいままでで一番多くなるというパターンであると予想されます。

シオノギヘルスケアが今回これを発売する背景には、今年5月から実施される予定の「指定濫用防止医薬品」という新たな販売規制カテゴリーの存在があると考えられます。同社の看板商品の一つに「メジコン」という咳止め薬があるのですが、この成分「デキストロメトルファン」がここ数年で若年層による薬物乱用の温床としてすっかり定着しているため、新制度「指定濫用防止医薬品」に指定することが決まっています。メジコンが販売規制対象になることで、その売上は落ちることは確実であり、代わりとして新たに「アスベリン」が登場したというのは、企業のストーリーとしてわかりやすいといえます。

それに、同社はメジコンの濫用問題で散々やらかしたので、企業としてのレピュテーションを改善したいという気持ちも働いていそうです。

製品の詳細な情報はこれからです。