家庭の薬学

自分に合った市販薬を選びませんか?

ロキソニンが一類薬から外れたら「やってみなはれ」で済まない件【2026/4/13~4/17のニュース】

久しぶりにちょっとまじめに書きます。

ロキソニンが第一類医薬品から外れるかもしれません。今夏から厚労省が、安全性の区分変更の検討に入ることが今週、報じられました。今年4月に定期区分の見直し制度が導入されたためです。

薬剤師不在でも買える市販薬、ロキソニンなど候補 厚労省が拡大検討 - 日本経済新聞

 

いやあ、率直にいってかなり心配ですね。第一類医薬品から外れると、バカスカ購入されるのじゃないかという気がします。

同系統のイブプロフェン(200mg)がすでにセルフ販売であることを考えると、薬学的にはロキソニンが第一類医薬品から外れてもさもありなんではあります。

ただ、その前にはいくつかの点で議論が必要ではないでしょうか。

まず、イブプロフェン200mg製剤の製品において、乱用などの実態が起きていないか。もし起きているのであれば、むしろイブプロフェンの規制を強化する検討をしたほうがいいでしょう。

つぎに、生活者がロキソニンをセルフ購入できるようになった場合の、安全性のリスクをどう予測するのか。仮にイブプロフェン200mgに大きなリスクが確認できなかった場合でも、ロキソニンというブランドゆえに発生するリスクがあります。病院で処方されるロキソニンが、セルフでいくらでも購入できるとなればセルフケア志向が強まります。その結果、適切な治療が遅れることも十分考えられるでしょう。これは規制の緩い米国を先行事例としてみるとよいと思います。

さいごに、ロキソニンのセルフ販売によって、なにかしらの社会問題が発生した場合に、どのようにして早期に修正するのか。市販薬の薬事行政は軌道修正が苦手です。過去には、デキストロメトルファン(メジコン)が販売前から乱用が懸念されていたにもかかわらず、一切の規制がなく販売され、その後若年層の乱用が問題になってからも、厚労省が規制に乗り出すにはかなりの時間を要しました。ロキソニンにおいてもそのような問題が発生することは十分に予見されます。そうなったときのスキームは今から議論すべきです。

 

さて今週、ロキソニンの製造販売元である「第一三共ヘルスケア」が、サントリーに買収されることが報じられました。びっくりしましたね。

買収額の2465億円は、同社のEBITDAの10倍は確実に超えてますから(営業利益100億程度)、かなりプレミアムを乗せたなあというのが個人的な感想です。

第一三共ヘルスケアはロキソニンの他、ガスター10も主力商品として抱えており、両剤とも冒頭の一類薬外しの俎上にのっています。今後、大きな売上の伸長が見込まれるでしょう(ガスターはPPIが登場した今ではやや微妙ではありますが)。おそらくこうした動きも織り込み済みの買収額で、サントリーとしてはこのビッグウェーブに早く乗れ的な買収であったといえそうです。競合のキリンHDが医療健康領域の研究開発にかなり力を入れていますので、サントリーも後塵を拝さぬよう、今回思い切った投資をしたのではないかと思います。

まあそんな企業都合の話はさておき、これはいち薬剤師的な感想として付け加えたいのですが、ロキソニンがサントリーという医療土壌のない飲料メーカーの手に渡るということは、この製品の扱いが医療的なお作法からますます外れることを意味します。安全性やエビデンス重視よりも、売上思考やマーケティング思考が強まることはほぼ確実だと思われます。

ロキソニンを、法規制のギリギリを攻めてナンボのサプリメントマーケティングの延長線上のような扱いにだけはしてほしくないと、切に願います。医療はエンタメじゃないからね。やってみなはれじゃすまないからね。