ドラッグストアにはジャーナリズムがいる

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利益の高い薬を売る

ドラッグストアにジャーナリズムが必要と思ったきっかけは、僕のまったく個人的な体験による。それは大手チェーンドラッグストアで薬剤師のアルバイトをしている時だった。

その日、ひとりの女性客が来た。下痢止めの薬が欲しいという。CMで御馴染みの「ストッパ」の名前をあげたので、僕は売り場を案内して商品を手渡した。それから、薬剤師や登録販売者なら誰でも説明するごく一般的な注意を添えた。

「下痢を止める効果は優れていますが、細菌性の場合は症状が悪化することがあるのでご注意ください」

女性客は「えっそうなの」といって商品を棚に戻した。それから「じゃあ、どれがいいかしら」と聞いてきたので、僕は他の下痢止め薬と比較したメリット・デメリットを説明した。数分話したのち、彼女は「ありがとう」と言って別の商品を買っていった。

女性客が去ったあとで、一連の会話をたまたま側で聞いていた店長(登録販売者)が僕のもとにやってきた。そして、こう言った。

「あんな安い薬売っても利益にならないから・・・」

もっと利益率の高い薬を勧めてくれないと困る、ということだった。

僕は、あっけにとられて「ハァ・・・」としか言えなかったが、しばらくして腹が立ってきた。もし僕が科学的・臨床的に間違った説明をお客にしていたのなら、しかられて当然だ。でも、「お客のために」と思ってした行動が、「お金が」と言われて否定されたら、やりきれない。

 

「よくあるハナシじゃないの?」

ところが、僕の驚きはこれで終わらなかった。

その晩帰宅した僕は、さっそく妻にこの珍事を話した。妻は元業界紙の記者。ジャーナリストとしての資質に(少なくとも僕よりは)長けた彼女のことだから、きっと「それは許せないね!」と賛同してくれるものだと思った。ところが彼女の言った言葉は、

「まあ~、よくあるハナシじゃないの?」

いやいや、そこは怒るところでしょ!?と僕は思ったが、彼女が言うにはドラッグストアは小売店なんだからそんな行為はさもありなんである、ということだった。

ちょっと頭を冷やした僕は、一般の人々にとってはそんなもんかもな、と思った。

でも、でも、でも、である。

いわせてほしい。僕ら(と僕のような実務経験の浅い者が言うのはおこがましいのだけど)薬剤師は、大学生時代、常に「患者のために」「薬の安全性を守れ」ということを教え込まれてきた。それこそが、薬剤師の社会的使命だと教えられてきた。そのための勉強を4年間(いまは6年だが)やってきた。

ところが、卒業して現場を見れば、「利益率の高い薬を売りましょう」である。そんな馬鹿な話ってあるだろうか。いや、薬剤師としての矜持は、この際小さなことだ。問題は、「もし、店長の言葉を客が知ったら、果たして客はこの店を利用するだろうか」ということである。お客にばれなきゃいいって?でも、消費者が知って怒るようなことは、お店はやってはいけないんじゃないか?お客が聞いたら怒ることを、店側の都合で隠す。それは世間の言葉で「騙す」っていうんじゃないのか。世の中、そんなものだっていう人がいるかもしれない。確かにそうだけど、それがいいことだなんて、僕はこれっぽっちも思わない。

 

だから「ドラッグストア」と「ジャーナリズム」

この体験はささやかなものだけど、僕はこの問題に少しこだわりたい。

ドラッグストアのことやそこで売られている薬のことは、もっとオープンに語れるべきだと思うからだ。そこでこのブログのタイトルを「ドラッグストアとジャーナリズム」とした。

共感していただける方とは、きっと仲良くなれるのではないかな。