『家庭の薬学』

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新製品「ナザールGスプレー」の「G」の効果【2023/11/6~11/10のニュース】

突然ですが問題です。11月10日、鼻スプレーで有名なブランド「ナザールスプレー」から新商品「ナザールGスプレー」が発売されました。では、この新商品の「G」が指す意味はなんでしょうか。次の3つからお選びください。

①ガッツのG

②グレートのG

③グリチルリチンのG

https://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2023/231110/

 

答えは「③グリチルリチンのG」。だと思います。いや、特に公式サイトで公表しているわけではないので、たぶんですけど。出題しておいてすみません。

「ナザールGスプレー」は従来からある「ナザールスプレー」に、グリチルリチンという炎症を抑える成分が追加配合された新商品です。グリチルリチン以外の成分は、ナザールスプレーとまったく同じ。

新たに加わった「グリチルリチン酸二カリウム」は、抗炎症成分として多くの市販薬に使われています。どんな成分なのでしょう。

グリチルリチンと馴染みの深いのは漢方薬です。多くの漢方薬には「甘草」という生薬が含まれています。甘草には炎症やアレルギーを抑える作用があり、これは甘草に含まれるグリチルリチンの作用だとされています。

伝統薬が広く普及している台湾ではこんな面白い研究(2021年)があります。アレルギー性鼻炎の参加者60人を、鼻うがいをする3つのグループに分けました。1つめのグループは甘草エキス、2つめはステロイド、3つめは食塩水の鼻うがい液をそれぞれ使用。その結果、鼻炎症状の変化に対して、甘草エキスは食塩水の鼻うがいよりも効果が高いかもしれない、という結果に。この研究1つではなんとも言えませんが、使い方によっては効果を期待できそうな印象です。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378874121003433

もっとも、こうした効果は、今回の新商品にも当てはまるわけではありません。まず、ナザールGスプレーに含有するグリチルリチンの量と、上記の実験で使われた甘草の量は異なるはずです。また、実験では2〜4週間鼻うがいを使って効果を測定していますが、ナザールGスプレーを長く使うことはおすすめできません。この薬には、ナファゾリンと呼ばれる鼻詰まりに効く成分が入っています。ナファゾリンは使い続けると、鼻詰まりを誘発することが知られています。そのため、ナザールスプレーやナザールGスプレーのような薬は、長くても10日ほどでやめるのがセオリーです。

ナザールGスプレーは、継続的に使用するような花粉症よりも、風邪をひいた時に数日間だけ鼻症状を抑えたい人向けの商品といえそうです。