「景気回復、この道しかない」というその道が、いつか来た道になりそうな件

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安倍政権と市販薬

今日は衆院選挙の日。ブログの趣旨とは外れるけれど、せっかくだから、ちょっと一般薬に関する視点で安倍政権を振り返ってみたい。

安倍政権が発足して、もうすぐ2年が経つ。株価上昇、大企業の業績回復、そして今回の選挙では自民党の圧勝が予想される。客観的に見て、安倍首相が第一次安倍政権(2006-2007年)以後のどの首相よりも“目に見える結果”を出していることは明らかだと思う。すごい首相だ。今年始めに亡くなった政治評論家の岩見隆夫さんが生きてたら「たいしたもんだ」と言った思う。安倍政権は順風満帆で、すべてうまくコントロールしているように見える。

 

すったもんだの一般薬のネット解禁

そんな安倍首相は、首相就任以来、一般薬の分野でどんなことを実現してきただろうか。ほとんど忘れられているけど、首相が就任1年目に訴えた「すべての一般医薬品のネット販売を解禁する」という政策があった。“すべて”という部分が政策のキモだったのだけど、審議の過程で業界団体等の反対に遭い、“ほぼすべて”で決着した。当時政府の産業競争力会議のメンバーで、安倍首相と同じように規制緩和を主張してきた楽天の三木谷社長が、審議の途中で「(むしろ)規制強化だ」とぶちキレて辞任を口にするなんてこともあった。

決着直後、僕はネット解禁に反対していた日本薬剤師会の幹部の一人に感想を聞いたら、

「“すべて”と“ほぼすべて”はまったくちがうんですよ」

と結果に満足そうだった。もっとも、大部分の一般薬はネットで購入できるようになったから、安倍首相としてはまずまずの結果だったのかもしれない。

 

成長戦略の効果は薄いのでは?

さて、今回の衆院選の争点の一つとされる経済対策は、安倍首相の掲げる「三本の矢」の成否にかかっている。「金融緩和」「大型予算」の2本はすでに放たれて、残すは最後の矢「成長戦略」だ。前の2本は財政再建の解決策にはならないので、一番大切なのは「成長戦略」。だから安倍政権成長戦略が実行できるか否かが、安倍政権の経済対策を評価する重要な指標になる。今回自民党が用意した選挙スローガンは『景気回復、この道しかない。』で、安倍政権成長戦略の道をこれから進めていく。どうぞ皆様、こうご期待ください・・・ということになっている。

でも、果たして期待していいものか。

実は首相は、すでに「成長戦略」を実行している。先の「市販薬のネット解禁」は、成長戦略の目玉の一つだった。

この2年間で政権は成長戦略をいくつか実行しているけど(※1)、いまの景気回復がそのお蔭だとする話は、政府本人以外からは聞いたことがない(※2)。少なくとも成長戦略の目玉だった市販薬のネット解禁については、経済成長につながっていない。今後の成長戦略に対する専門家の予想も、財政再建を実現できるほどではないとされている(※3)。

心配なのは、こんなふうに安倍首相の成長戦略が大した効果を生まなかったり、反対派の抵抗によって戦略自体を実行できなかった場合だ。その場合は財政収入が増えないので、景気の起爆剤として組んでいる大型予算が借金として残ることになる。結果として、大型公共投資で一時的に景気を良くして、後世への借金を作り続けるという旧来の自民党の政治運営と変わらないことになる。安倍政権の掲げる「この道」が、いつか来た道になる可能性がある。

 

※1成長戦略で、明るい日本に! ≪詳細版≫ | 首相官邸ホームページ

※2 アベノミクス「3本の矢」 | 首相官邸ホームページ

※3 成長戦略の引き上げ効果予想は0.2%─1.5%:識者はこうみる | Reuters