『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

厚労省認可の抗原検査キットが今週からアマゾンなどで購入可能に【2022/8/29~9/3のニュース】

厚労省認可の抗原検査キットが今週からネット解禁されました。私が知る限りニュースリリースでの発表が最も早かったのは日本調剤です。8月31日朝から抗原検査キットのネット販売をスタートさせました。アマゾンが開始したのはその日か、9月1日か2日だと思います。9月1日から販売開始したサイトもありました。製品はいずれもシーメンスヘルスケアの製品で、価格はアマゾンでは5回分で7980円。どこもおおよそこれくらいの価格です。1回あたり1600円程度の計算になります。これまで薬局で購入できた医療用の抗原検査キットが、大手チェーン薬局であれば概ね1600円くらいでしたので(中小規模薬局では価格の高いところもありました)、妥当だと思います。いずれはもう少し安くなっていくでしょうね。研究用の抗原検査キットは、東亜産業の製品は800円ほどで投げ売りされていたりするので、それと比較すると2倍の値段差ですが、値段だけで選ぶは危険です。

さて、医療用、研究用、市販薬(一般用)・・・とかなり色々な呼び名の抗原検査キットが出て来ましたので、ここで簡単に説明します。

まず、医療用抗原検査キットですが、これは元々は、病院でしか扱えないものでした。しかし、新型コロナの感染が拡大して、医療機関が逼迫し、生活者がもう少し自主的に検査ができた方が良いということ、そして「研究用」と称する精度不明の抗原検査キットが市場に広く出回ってしまったことなどの(おそらく)理由から、2021年の9月に特例として薬局で販売できるようになりました。これがつい最近まで、処方箋を受け付けている薬局で販売されていた医療用抗原検査キットで、カッコ書きで体外診断用医薬品とも呼ばれていました。薬局であれば、処方箋なしでもこの医療用抗原検査キットが購入できたのです。

https://www.mhlw.go.jp/content/000836277.pdf

ただ、この医療用抗原検査キットの場合、あくまで特例として薬局で販売しているので、対面でしか販売できない(ネット不可)、という不利な点がありました。また、薬剤師がいる店でも、普段処方箋を受け付けていない店は販売ができないという不便さもありました。そこで、もう一段階、普及しやすくするために、厚労省が抗原検査キットを「一般用医薬品」として承認することにしたというのが今回の出来事です。一般用医薬品とは、風邪薬のパブロンや、うがい薬のイソジンのような、ドラッグストアなどで処方箋なしで購入できる薬のことです。検査キットメーカーは今までは医療用抗原検査キットとして製造・承認を厚労省から得ていました。今後は、一般用医薬品として厚労省に承認申請をすることで、薬局やドラッグストアでは一般用薬品(市販薬とも呼びます)として扱われるようになります。そうすると、どんないいことがあるのか?一般用医薬品にすると、消費者はネットで購入できるようになります。また、薬剤師がいればどの店でも在庫があれば購入できます。

もう少し詳しく説明します。今回、抗原検査キットは、一般用医薬品の中の「第一類医薬品」というカテゴリーで販売されることになりました。第一類医薬品の特徴は、薬剤師の安全確認や説明が必要であるという点です。ロキソニンやガスター10と同じであると考えておけばよいでしょう(薬剤師側にはプアスアルファで通常の第一類医薬品とは異なる販売方法が行政から指導されていますがここでは割愛)。第一類医薬品は、一定の年数を経ると、薬剤師が不在時でも購入可能になる第二類医薬品・第三類医薬品に変更されることがしばしばあります。まだ先の話にはなりますが、いずれはさらに購入しやすくなる可能性もあります。

ただ、検査キットというのは、正しい使い方や、解釈が重要です。正しい手順で使わなければ、正確な測定はできません。また、キットを使うタイミングも重要です。抗原検査キットの精度は、発症2日〜9日目の間であれば、正確性の高いPCR検査と概ね精度が一致すると現在考えられていることは、おそらくあまり一般の方々には知られていないでしょう。つまり、発症当日に使って陰性でも安心してはならず、翌日もう一度検査すると陽性だったということがあります。以下、厚労省のサイトから引きます。

”承認後当初は、抗原検査キットで陽性の場合は確定診断となる一方、陰性の場合は確定診断のために再度PCR検査が必要でしたが、調査研究の結果、発症2日目から9日以内の有症状者については、抗原検査キットとPCR検査の結果の一致率が高いことが確認されました。 そのため、6月16日に「 SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」の見直しを行い、鼻咽頭拭い液による検査は、発症2日目から9日目までの患者について、検査結果が陰性でも確定診断が行えるようになりました。”

新型コロナウイルス感染症に関する検査について|厚生労働省

こうしたことも含めて、しっかり使い方を伝えて、感染拡大をさせず社会の公衆衛生を守ることが薬剤師の仕事となります。