確信犯か、偶然か。おもしろネーミング
正月なので、気楽な話を。
冗談なのか、大真面目なのか。偶然なのか、必然なのか。
市販薬のネーミングには、初見、思わず笑ってしまうものがいくつかある。
たとえば、頭痛薬でお馴染みの「イブA」。
これとまったく同じ有効成分を含む薬に「アダム」という名の商品がある。
聞けば誰もが「旧約聖書」を思い浮かべるだろう。わざとなのか、偶然なのか。ぼくはしらない。
「太田胃散」のソックリさんは・・・
続いて、”い~薬です”のCM有名な胃腸薬「太田胃散」。年末年始の食べ過ぎ飲み過ぎで、お世話になった人もいるだろう。
これとクリソツな商品が、緑色の缶の「全国胃散」。
全国胃散の発売元は「全国薬品工業」だから、たまたま同じような名前になっちゃったのかも?たまたま似たケースのデザインになっちゃったかも?それはわかりません。太田胃散の発売は1898年(商標も登録※1)、全国胃散は1964年だから、後発製品という事になる(※2)。
両者の成分は微妙に異なる。ほとんど効果に差はないと思うけど、気になる人は店頭で薬剤師・登録販売者に聞いてほしい。
このほか、先日紹介した、整腸薬「ザ・ガード」と「ザ ブロック」も、類似薬のひとつといえる。
メンタームはメンソレータムのパクリ?
ところで、「メンソレータム」ならぬ、「メンターム」という薬があるのをご存じか。
メンソレータムは、ロート製薬が発売、メンタームは近江兄弟社が発売している。中身の有効成分はほとんど同じ。
世間ではメンソレータムが圧倒的な認知度を誇っている。しかし、驚くなかれ、実は近江兄弟社こそが、ロート製薬に先駆けて、アメリカでつくられたメンソレータムを日本で発売していたのである。
近江兄弟社のウェブサイトによれば、こうだ(文中のヴォーリズ氏は、近江兄弟社の創業者)。
家庭保健薬として日本中に普及した「メンソレータム」は、米国実業家A.A.ハイド氏(YMCAの強力な支援者)がヴォーリズの働きに共鳴して支援のために提供したものであり、後の近江兄弟社の事業を支える大きな柱となった。
ハイド氏は、日本で古くから使われていたメンソールからヒントを得て、メンソレータムを開発したという。そのハイド氏から提供された「メンソレータム」を、近江兄弟社が日本で販売したのだ。
その後、メンソレータムの販売権は、近江兄弟社からロート製薬に移り、今日あるとおりだ。
その経緯は、ウィキペディアをはじめ、ウェブ上に書き散らかされているが、出処に乏しい。
ぼくが探した中で、信ぴょう性がありそうなのは、大阪市立大学の客員研究員によって書かれた論文だ。近江兄弟社の社史などを元に書かれている。1974年に近江兄弟社は倒産し、その際に米国メンソレータム社と軋轢が生じたという。なかなかおもしろい。
http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/infolib/user_contents/kiyo/DBp0060203.pdf
論文では言及されていないが、状況から察するに、一度倒産した近江兄弟社が再建したのち、「メンターム」を作って販売し始めたということなのだろう。
そういう意味では、メンタームがメンソレータムから派生したというのは事実だ。これをパクリというかどうかは別だけど。
「メンソレータムよりメンターム」な人もいるよ
いまや本家・近江兄弟社よりもすっかり有名になった、ロート製薬のメンソレータム。
両社は、ウェブサイトでは互いに触れておらず、そのよそよそしさがたまらない。
ウェブ上でググっていると、近江兄弟社を訪問した人のレポートを見つけた。
そして、世の中には、「メンソレータムよりメンタームが好き」という人もいるようだ。
メンターム、ズッ友、タイトル