中華圏から見た日本の薬の魅力
日本の市販薬はすごい。
なんて考えてる薬剤師は日本にはほとんどいないと思う。それだけに、どうして外国人観光客は日本の薬を爆買いするのかは気になるところ。
「日本人は『日本人論』『日本文化論』が大好き」と書いたのは、作家の内田樹さんだった。たしか、「日本辺境論」にそうある。海外の目を通じて自分自身のことを知る。そういう事は沢山ある。
「爆買いの正体」という本がおもしろい。著者が鄭 世彬さんという台湾人で、「日本薬粧研究家」という肩書を持ち、日本の薬と化粧品を研究・紹介している。
中国人・台湾人はなぜ、日本の薬を買うのか。インバウンドビジネスや、爆買い現象に興味のある人にはおすすめの一冊だ。
自国にはない成分があるから買う
本書に書かれた「爆買い」の理由から、気になったものを引く。
- 中華圏の人にとって買いだめは本能そのもの。特別なことではない。台湾では爆買いは恒例行事。
- 日本の薬には、母国では認可されていない成分がある。日本製の「キャベジン」には、台湾製にはないリパーゼが入っている。日本製の「メンソレータムAD」には、台湾製にはないリドカインが入っている
- 日本で買うと安い。目薬「サンテFX」は日本では300円代だが、台湾では1050円もする。
- 2014年10月から免税対象品目が拡大されて、コスメや医薬品などの消耗品も免税対象になった
- 日本の接客サービスがいい。日本では店員が会計後にお客に「ありがとうございました」というが、台湾ではお客が「ありがとうございます」という。
デザイン性の高さは日本製の美点
ぼくが面白かったのは、著者の鄭さんが関心するという、日本の製品の「計算されつくされたパッケージ」「容器のデザイン性の高さ」だ。龍角散ダイレクト、リセ、サンテボーティエなどを挙げている。たしかにこれらはデザイン性に優れている。ぼくなんか、「成分よりも見た目重視の薬だな」と、ちょっと斜に構えてしまうのだけど、これは成分ばかりに目がいく薬剤師としてのバイアスであるように思った。デザイン性だって大切なのだ、一部の利用者にとっては。
外国人客に笑顔のない日本人スタッフ
いっぽう、著者は日本人のサービスの質に気になるところもあるようだ。
外国人客の多い都心のドラッグストアでは、日本人用の普通のレジと外国客用の免税専用のレジに分かれているところが増えています。そのとき気づくのは、免税専用カウンターでレジを打つ日本人スタッフには笑顔があまり見られないことです
ほんこれ。前にも書いたけど、日本人スタッフは”爆買い”に冷たいと思う。自戒を込めて。