『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

「ロキソニンテープ、第一類医薬品やめるってよ。薬剤師不在でも買えるってよ。」の補足情報

note「ロキソニンテープ、第一類医薬品やめるってよ。薬剤師不在でも買えるってよ。」の補足情報です。いつも通り資格者向けなので、一般の方々が読むのはお控えください。誤解しないように書いてますが、それでも誤解・誤読の可能性があります。

 

ロキソニンテープが第二類医薬品になります。8月25日。現行のスキームに沿ってのリスク区分変更です。経口のロキソニンは以前から据え置きですが、外用薬は問題ないと判断された様です。非常にインパクトがあります。市場はかなり拡大するでしょう。

 

さて、今回のメインテーマであるロキソプロフェン外用と他剤の効果の比較ですが、これは結構ややこしいですよね。私の勉強不足と言われれば、それまでですけど、難しい。

NSAIDS間での比較研究はあるにはあるのですけど、こう、パキッとしたものでもない様に思います。例えば、こちらのメタアナリシス。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5931249/

ロキソニンは対象から外れていますし、フェルビナクも入っていません。サリチル酸は入っています。とりあえず、ジクロフェナクは強そうという結論です。

ロキソニンはもともと日本で開発した薬ということもあり、日本国内では知名度がありますが、海外ではそうではありません。特にアメリカでは使われていないこともあり、臨床の論文数は少ないと言えます。

もともと外用薬同士の比較研究が経口よりも少ないことに加え、外用と経口でどう換算すればいいのかもちょっとややこしいですし、まあ、とにかく、わたしには手が余るなあというのが率直なところです。

一般論としてはNSAIDSは経口と外用ではあまり差はないと言われており、また、経口であればロキソニンと他のNSAIDSとの比較もあります。そこで三段論法を使って総合的に考えると、ロキシプロフェンよりもジクロフェナクの方が効果がありそうだという印象はあります。

ロキソニンの研究報告は少ないと書きましたが、それでも以前よりは増えている様な気がします。特に、海外です。中国の研究もいくつか目につきます。メーカーとしても今後、中国での拡大を視野に入れているのではないでしょうか。市場大きいですし。同じアジア人なので民族差も少ないですし。

最近の研究をいくつか紹介します。

<中国2020>経皮吸収のロキソプロフェンに吸収促進剤を添加することで吸収率が高まったという報告。

Enhancing effect of fumaric acid on transdermal penetration of loxoprofen sodium 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32805639/

 <中国2020>脊柱管狭窄症に対して、中薬+マニュピレーションの治療を、ロキソニンと比較した報告。

Effect of Tongdu Shujin Decoction plus Lijin manipulation on degenerative lumbar spinal stenosis

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32115922/

<サウジアラビア2019>抜歯後の疼痛に経口のジクロフェナクとロキソプロフェンを比較したRCT。治験ですね。

Loxoprofen Sodium Versus Diclofenac Potassium for Post-Dental Extraction Pain Relief: A Randomized, Triple-Blind, Clinical Trial

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31881670/

<中国2019>ロキソニンのパッチとタブレットのオープンラベル。

Efficacy and safety of loxoprofen hydrogel patch versus loxoprofen tablet in patients with ankylosing spondylitis: A 4-week randomized, open-label study

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6529895/

 

まだまだありますがキリがないのでここでやめておきます。中国のP2試験なども2019年にあります。パイプラインを確認すれば走っているかわかりそうですね。

あと、ちょっと脱線しますけど、日本で一番処方されているNSAIDSはロキソニンだという2017年のデータがありました。最近の日経の医師アンケートでもそうだった気がします。

Recent prescription status of oral analgesics in Japan in real-world clinical settings: retrospective study using a large-scale prescription database

 

ロキソニンよりもサロンパスが効いたというエピソードですが、今回紹介したケース以外にもわたしは聞いたことがあります。なぜサロンパスの方が満足できたのかはわかりません。ただ、サロンパスは密着感がいいですね。その感触が痛みを紛らわせているのかも・・・?”手当て”なんて言葉もありますし。ただ、まあ、常識的にはサリチル酸よりもジクロフェナクやロキソプロフェンだとは思います。

市販薬には説明書に書かれたルールがある、とnoteに書きましたがこれは添付文書のことです。ロキソニンは1日4枚まで、ジクロフェナクは1日2枚までとなっています。またロキソニンは妊娠中は相談することとなっていますが、ジクロフェナクは問答無用で禁忌記載です。noteでぼかした注意すべき副作用というのは、ジクロフェナクの光線過敏症です。紫外線が多く肌の露出の多い夏は気をつけるのがセオリーだと思います。あとは貼る部分ですね。腰なら服を着ますが、腕とかは露出しやすい。これ以上は説明するまでもないので、こちらの資料だけ貼り付けて詳細は省きます。あとは医療用の添付文書などを参考。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/41/5/41_360/_pdf

 

メンソールの鎮痛効果は、いずれまた調べたいと思いますが、経験的に鎮痛効果への寄与が確認できています。最近ですと、日経DI5月号に掲載されていた東大澤田教授のヒヤリハットデータベースから。神経障害性疼痛にハッカ油を使ったメンタ湿布が奏功した例と、不定愁訴の掻痒に外用剤+ハッカ油混合が奏功した例。こゆのをみると、なにかと市販薬にぶち込まれてるメントールも臨床的には馬鹿にできないなあと思います。

 

あと、今回は書くのを省きましたが、わたしはロキソニンテープ、ボルタレンテープ、フェイタスジクサステープの3つをそれぞれ何度か同時に使い比べたことがあります。粘着性などは3つとも優秀です。剥がれにくいのに、剥がす時の痛みが少ないです。サロンパスやトクホンなどのほうがはるかに痛いと感じます。特にトクホンはヒリヒリします。どちらも匂いもきついです。

今回の3つはメントールは入っていますが、それほどきつくはないです。というかあんまり匂わないですね。ロキソニンとボルタレンは添加物として、フェイタスジクサスは薬効成分としてメントールを入れています。ボルタレンは最近リニューアルしまして、パッケージに「クール」と書かれています。一方、ロキソニンには書かれていません。でもどちらも同じくらいメントールの効果を感じます。含有量はほとんど一緒なんじゃないでしょうか?

ロキソニンもボルタレンと同じくらい清涼感(清涼感というかじわじわ感)がありました。メントール多めのフェイタスジクサスはさすがに使用感に大きな差があるだろうと思っていたのですけど、これも匂い・使用感、ともにそこまで変わりませんでした。使用感は差を感じた場合と、感じなかった場合がありました。個人差や皮膚の状態に左右されるかもしれません。これも評価はちょっと難しいですね。まあ、個人的な感想です。

 

今回note書いてて改めて思ったのですけど、ロキソニンテープは安全性と有効性のバランスが取れていますよね。そういう意味では良い薬なのかなと。

少なくとも、今回紹介した既存の二類薬よりは安全性は劣ってはなさそうです。そうした薬が、今まで薬剤師を介してのみ販売される一方で、もっと注意が必要なジクロフェナク外用剤が完全セルフで売られていたというわけです。その理屈はわからなくもないですが、どうなのでしょうね。市販薬業界の課題の一つではないでしょうか。

何かお気付きの点がありましたら教えていただけると勉強になります。ではでは。