コロナウイルスの混乱の初期、つまり1〜2月の頃にお客さんからよく聞かれたのが「洗剤も消毒に使えるの?」という質問でした。非常に答えにくい質問でした。データがなかったからです。そんな中、今月17日に北里大学が興味深いリリースを出しました。
ドラッグストアなどで買える商品を使って、実際に新型コロナウイルスへの効果を調べたものです。この報告のすごいところは、実際の商品名を明記していることと、新型コロナウイルスを使っていることです。
こちらがリリースです。
それによると、かんたんマイペットやトイレマジックリンなどにも不活化効果があるとのことです。ただ、これらの商品を吹きかければ一瞬でたちまちウイルスが死ぬ(不活化する)というイメージは持たない方が良いかなと思います。
この研究では1分もしくは10分でその効果を測定しています。一口に効果があると言っても、あくまでもこの時間の条件下であることは頭に入れておきたいと思います。例えば不活化効果のある商品の中にビオレuのハンドソープがありますが、このハンドソープを1分間も手につけている人はいないと思います。実際は10秒くらいでしょう。だから効果がないというわけでは全然ないのですが、日々の感染対策に活用するには、短い時間で不活化効果があるものが、優秀な消毒薬と言えます。病院などで速乾性のエタノール消毒液が重宝されるのは、短時間で確実な消毒効果を得られるためです(※1)。消毒するときは時間についても意識すると良いと思います。せっかくのハンドソープも、数秒だけちょちょっとつけて洗い流すだけでは十分な活用とは言えないと思います。長時間接触させるのはオススメしませんが、今のところ推奨されている20秒くらいかけてしっかり洗うのが良いと思います。
日用雑貨を使った新型コロナ対策は、経産省でも15日に発表がありました。こちらも注目です。
経済産業省は15日、台所・住宅用洗剤の材料である「界面活性剤」など3品目について、文献調査の結果、新型コロナウイルスに対する消毒効果があることが分かったと発表した。(時事通信)
実証で有効性が確認できるのは5月中旬になるそうです。個人的には公的機関によるものなので十分にサイエンティフィックであって欲しいです。なぜ厚労省ではないのか・・・。
話を、北里大学の報告に戻しますと、もう一つ注目したいことがあります。エタノール50%以上であれば不活化効果があり、30%では10分間接触しても効果がなかった点です。エタノール30%といえば、ここのところいろんな店頭で見かけることの多かった銀イオン入りのハンドジェル商品が、エタノール30%でした。商品には濃度表記されていないのですが、メーカーに問い合わせると30%でした。ネット上では桑満さんという医師が、火をつけたけど全然燃えないのはエタノール濃度が低いからではないかという疑義をツイートしていました。
手ピカジェル VS 手指を汚れから守る銀イオン配合なんちゃら(笑)
— 桑満おさむ (@kuwamitsuosamu) April 13, 2020
成分にエタノール(アルコールのことね)と書かれているけど、エタノールはどこいったんだ・・・。 pic.twitter.com/ASfwJykpBr
引火させて確認する方法は面白いですね。これと関連して、薬剤師の松村さんが行ったこちらの実験は素晴らしいです。50%までは火がつきますが40%になるとつかないことがわかります。
エタノール水溶液が何vol%まで火がつくのか気になったのでやってみました。日本、気温20度、湿度33%、くもり☁️の日です。
— 村松早織@薬剤師🍬登販講師 (@saori_tmaquilla) April 16, 2020
無水エタノールは一連の騒動の前に買った少し古い製品です。ご了承ください🙇♀️
続きはこちらからお願いします↓https://t.co/PQQwBUDMu8 pic.twitter.com/5mHNvctGaa
一概には言えませんが、火のつき具合はエタノール濃度を自分で検証する指標になるかもしれません(ただし、火の扱いには十分注意を!!)。
これは表示されている濃度と実際の濃度が異なる場合の検証材料になるかもしれません。表示がウソ?まさかと思われるかもしれませんが、なんとアルコール濃度が表示と異なる商品が今週、発覚しました。萬祥という会社の「ハンドクリーンジェル71%」という製品です。71%と書いてあるのに、いろいろ不自然な点があり、本当に71%もエタノールがあるのかという疑義がネットで上がりました。すると15日になって、萬祥から濃度が不足しているというリリースが出たのです。正直、これはかなり驚きました。街中でフツーに店頭に並んでいた商品が、まさか詐欺的商品だったとは。現時点では、意図せぬ誤りだったのか、意図的なものだったのかは不明ですが、濃度が非常に重要となっている状況においては致命的な誤りだったと言わざるを得ません。
これから先、新型コロナウイルスのような感染症が再び発生し、社会が混乱に陥ることがあると思います。そのときは、今回の出来事を教訓として、商品選びには慎重になりたいですね。
さて、最後に余談ではありますが、今週はドラッグストアでも従業員に対する手当てが報じられていました。金額は公表しているところとしていないところがあります。「え?たったこれっぽっちの手当て??」という声も、どこからともなく聞こえてきますが・・・。
【2020/4/17市販薬情報②】従業員に手当支給するチェーンストアが増えてきました。公表されているのはスギ、トモズ。ただ、金額は公表している企業とそうでない企業があります。
— kuriedits (@kuriedits) April 17, 2020
従業員に特別手当支給の動き ドラッグストアでも 新型コロナ | NHKニュース https://t.co/qDrrT27kXO
※1 https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/handwash/02.php また、本サイトでは時間ごとの消毒効果を見た研究なども紹介されている