『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

新発想・新商品、だけど新薬じゃない。フレイルに着目した消化薬「ベリチーム酵素」

先日紹介したフレイル対策の新商品の消化薬「ベリチーム酵素」。その特徴は消化に特化した胃腸薬である点です。成分として珍しいのは「パンクレアチン」でしょう。でんぷん、タンパク質、脂質を分解してくれます。

新発想かつ新商品ですが、新しいお薬ではありません。元々は「ベリチーム配合顆粒」という名前で病院で処方される薬でした。しかも発売されたのは1967年!古っ!!でも、今でもちゃんと病院で処方されています。

病院用の薬として開発された経緯をメーカーの説明から引用します。

消化酵素剤は胃液,膵液,腸液等の分泌異常による消化管内酵素不足時の補充療法,及び各種 の消化異常症状の改善に投与されている。 一つの消化酵素だけが不足するという可能性は少ないことから,アミラーゼ,プロテアーゼ, リパーゼ活性をもつ濃厚膵臓性消化酵素を主体とし,アスペルギルス産生消化酵素,細菌性脂 肪分解酵素,繊維素分解酵素を加えた総合消化酵素剤を開発した。各成分の組成は将来の国民 栄養摂取量の変化を見越して設定した。 なお,ベリチームの再評価結果は 1984 年 9 月に通知されている。 2016 年 12 月,塩野義製薬株式会社から共和薬品工業株式会社に販売を移管した。

古い、古すぎます。でも、だからといって、薬として劣っているとは限りません。消化酵素だけの市販薬と言うのは案外少ないものです。また、胃酸を中和する成分が入っていないので、他の薬との飲み合わせを気にする必要はほぼありません。使いやすいお薬だと思います。病院用では一日最大3gでした。今回発売する市販用も1日3gで同じ用量です。効果はメーカー資料から再び引用しておきます。

作用機序 消化作用 ベリチームはアミラーゼ,プロテアーゼ,リパーゼ及びセルラーゼ活性を有する消化酵素剤で ある。本剤の配合消化酵素中,中性~アルカリ性領域に活性 pH 域を有する濃厚膵臓性消化酵素は胃 での失活を防止する目的から腸溶性顆粒とし,酸性領域に活性 pH 域を有する 3 種類の消化酵 素は胃溶性顆粒としている。file:///C:/Users/kurihara/Downloads/340018_2339163D1037_1_010_1F.pdf

この製品の営業的な側面にも少し目も向けておきたいと思います。先日書いた通りこの薬は「フレイル対策」というテーマでプロモーションをかけています。フレイルに絡めて市販薬をプロモーションをするのは、この商品が初めてではないでしょうか?私は他のメーカーの市販薬を含めて今まで見たことがありません。

「フレイル対策は50歳代前半から!」

という文言の啓発グッズまで用意してますからね。やる気満々です。

メーカーのサイトも気合が入ってますし、医療従事者向けのページではご丁寧にフレイルについて厚生労働白書を用いて啓発しています。おそらく広告投下も行われると思います。

シオノギヘルスケアは塩野義製薬から2016年に分社化された会社なのですけれど、そこからイソジンの権利騒動があったり、「PL顆粒」を発売したり、良くも悪くも話題に事欠かない存在となっております。病院用の薬をブランドを使って市販薬市場に展開するという同社の手法は今後も続くかもしれません。SNS上では薬剤師さんのこんなツイートも。さもありなん。

 

drugstore.hatenablog.com