『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

米国ではドラッグストア薬剤師がコロナワクチンの投与を開始。日本は・・・?【2021/2/8~2/12のニュース】

今週のニュースです。先週紹介したヘルスケア薬局の駅ナカ零売店が、テレビや新聞でも取り上げられたそうです。この加速感。驚きです。

 

さて、今週はコレといったニュースはないのですが、民放で「薬局の進化が止まらない…“女優ライト”完備のメイク空間・キッチンやライブラリー・薬のドライブスルーも」というニュースが報じられていたようです。

https://www.fnn.jp/articles/-/141653

どんな内容かなと思ったら、その一つが、先日このブログでも紹介したココカラファインのD2Cのお店でした。いや、そこは薬局じゃなくてドラッグストアなんですけど・・・。

この「薬局」と「ドラッグストア」の混同はメディアでよく見ます。

どうでもいいことかもしれないですけど、こちらは業界の人間なのですごく気になるのです。

「薬局」というのは病院の処方箋を受け付ける場所です。待合室があって、調剤室があって、そこには乳鉢やビーカーが(一応)あって、というのが薬局です。

「ドラッグストア」というのは、これは法律の言葉ではないのですが、だいたい物販のお店のことを指します。法律では「店舗販売業」と言います。病院の処方箋は受け付けないので、乳鉢もビーカーもなくてもOKです。昔のドラッグストアはだいたいこの店舗販売業だったのですが、近年は「調剤併設型ドラッグストア」という、薬局がくっついたお店がかなり増えてきました。ただ、物販と薬局の仕事は基本的には別々です(責任者も別々です)。レジも分かれています。

なので、薬局とドラッグストアは区別していただきたいなと思います。

 

そういえば、新型コロナワクチンが12日、ついに日本に到着したようです。いよいよ日本でも接種が始まりますね。米国ではもう昨年12月中旬から接種が始まっています。

アメリカで新型コロナウイルスのワクチン接種開始 - BBCニュース

米国では今週11日からスーパーや薬局でも接種できる試みが始まったと日本のメディアが報じています。

アメリカ 大手スーパーなどでも接種可能に|日テレNEWS24

実際に小売業のサイトを見ると、なかなか熱いことになっています。

米国大手スーパーWalmartでも新型コロナワクチンが接種できるようになります。サイトには「我々は投与支援に選ばれたことを誇りに思う」 「我々薬剤師たちは年間数百万本の注射を行っており、最新のガイドラインの下で厳格な訓練を受けている」。うーん、頑張ってますね。

Administering COVID-19 Vaccines

米国コストコでも新型コロナワクチンの接種が始まりました(2/11UpDate)。コストコファーマシーではコロナ以外でもワクチン接種のプライスリストを提示しています。在米の方にツイッターで聞いたところ、ここに掲載されているガーダシルなどHPVワクチンも薬剤師が注射を打てるそうです。

Costco Pharmacy Immunization Program | Costco

米国の大手薬局チェーンWalgreensは新型コロナワクチンの特設ページを開設しています(2/9 Update)。充実したサイトで、「ワクチンあります」「専門家訓練しています」とし、さらにワクチンへの誤解(打つと感染するなど)を解く動画も掲載し、啓発も兼ね備えています。

COVID-19 Vaccine: FAQs & Distribution Information | Walgreens

日本もいずれこうなると思います。もちろん今回の新型コロナウイルスでは、日本の薬剤師が注射を打つことはないと思いますが、将来的にはそうなるだろうなという気はします。そうなると、薬局(ドラッグストア)は、セルフケアの啓発の要の場になるでしょう。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)では、薬剤師向けのインフルエンザ予防接種のガイドを用意しており、その中で薬剤師はインフルワクチンを「推奨し」「投与し」「CDCの推奨方法に従って行う」ことで、「インフルから患者を守る重要な役割を担っている」としています。

これは米国薬剤師が優秀だからというより、そのような教育を受けている制度上の理由です。日本でも一部の薬剤師はこうした職務拡大を望んでいますが、望まない薬剤師ももちろんいます。しかし、これは、薬剤師の意志の問題ではなく、社会が何を欲しているかという、生活者の問題だと私は思っています。生活者が悪い、という意味ではなくてね。

https://www.cdc.gov/flu/pdf/professionals/vaccination/protect-your-patients.pdf

 在米30年以上の流通ジャーナリストの鈴木敏仁さん(私、この方の雑誌連載が好きなのです)に教えていただいたところでは、アメリカの薬剤師が注射を打てるようになるには、当初はもちろん医師会が反対したりして紆余曲折があったそうですが、調剤以外の儲けを必要としている薬剤師会やDgs協会が通したそうです。荒利益が高く比較的値崩れしづらいので(近年は競争が激しいようですが)ドラッグストアにとっては良いビジネスのようです。で、薬剤師が注射を打つことについては現時点では特に問題は起きていないようでして、「アメリカでは薬剤師の予防接種はもう空気のようなもの」だそうです。

また米国で薬剤師免許取得のために通学中の方によると、「数が多いですし立地もスーパーの中なので、薬局に来るつもりじゃない人が入り口の看板を見てふらっと、あ、そういえば予防接種まだだな、くらいの感じで立ち寄れるのも大きいですね。買い物している間に準備して、準備できたら店内放送で呼んでくれて便利です」とのこと。なるほどです。