『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

薬局で新型コロナウイルス抗原検査キットが発売。その2つの注意点【2021/9/27~10/1のニュース】

今週のニュースです。

まず一番の出来事は、新型コロナウイルスの抗原検査キットの薬局での販売が、今週から解禁されたことです。「え?抗原検査キットって、今までもドラッグストアで売ってたよね?」と思われるかた、そうですね。でも、ドラッグストアやネットなどで売られていたあの検査キットたち、ちょっと問題になっていたことをご存知でしょうか。今まで売られていた抗原検査キットの箱を見ていただくと、おそらく「研究用」と書かれていたと思います。これは研究用として使うものであり、新型コロナウイルスにかかっているかどうかの診断に使うものではないということです。今週から解禁された検査キットは、「医療用」として国が承認されたものですから、両者は別物です。

にもかかわらず、研究用の検査キットが、あたかも新型コロナの診断に使える正式な製品であるかのように、お店やネットで販売されてきたのが、いままでだったのです。

その全てが問題のある商品であるわけではないとは思いますが、例えば悪質な例では、「国の承認を受けた」という宣伝文句を使っていた業者が、今年3月、消費者庁から優良誤認を理由に行政指導を受けるということがありました。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_210326_01.pdf

また、ウイルスを検出する精度が極端に低い粗悪品もあったようです。9月、未承認の検査キットを感染の有無が判定できる医薬品として販売していた会社の役員が逮捕されました。国が承認したキットの246分の1の検出精度しかない粗悪な検査キットで、業者は1000万円以上売り上げていたそうです。

消費者には、こうした未承認の検査キットが、粗悪品であるかどうかを知る方法がありません。困ってしまいますよね。そんな中で、今回厚労省の特例によって、今まで医療機関が使えた厚労省承認済みの診断用の抗原検査キットを、生活者が薬局で入手できるようになったというのが今回のニュースです。

こうした背景を考えましたら、今回の正規の検査キットの発売解禁は、一見すると歓迎してもよさそうなことですが、ただし、2つ注意点があります。

1つは、もともと、この抗原検査キットというのは、非常に使い勝手が難しいということです。陽性であれば当然、病院を受診してさらに検査を受ける必要がありますが、陰性だったからといって感染していないと安心できるものではないのです。じゃあ、何のための検査?陰性結果に安心して、感染者が感染を広げてしまう可能性もあります。そのため薬剤師の間でも、この検査キットへの評価は賛否両論あるような印象です。少なくとも、多くの薬剤師が100%の歓迎をもって迎えている状況ではなさそうです。今のところは。

もう1つの注意点は、これは「薬局」で販売されるものだということです。ここでいう薬局とは、わかりやすくいうと、薬剤師が処方箋を受け付けているところという意味です。今回の検査キットは、「薬局医薬品」という扱いになっており、多くのドラッグストアで扱っている妊娠検査薬などの市販薬とは異なるのです。処方箋を受け付けていないドラッグストアに行っても購入することはできません。処方箋を受け付けている薬局か、薬局が併設しているドラッグストアで購入する必要があります。

コロナ禍においては、検査精度の問題がしばしば取り沙汰されました。ヘルスリテラシーの1つとして、多少なりとも心得ておくべき時代なのだと思います。

 

さて、話は変わりまして、今週の新商品です。大正製薬が「アイリス フォン ブレイク」「アイリス フォン リフレッシュ」を10月1日に新発売しました。スマホのイラストパッケージは、インパクト十分でわかりやすいものです。どちらも1500円ほどの高額品です。大正製薬も高級目薬市場へ参入というわけでしょうか。成分的な特徴はさほどない印象です。

最後に、余談になりますが、薬局向けの業界紙「薬局新聞」の最新号で、拙著「その病気、市販薬で治せます」のインタビューが、1ページで掲載されました。なんと、1ページ、丸々使ってです。ありがとうございます。