『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

クレベリンを販売したドラッグストアのヘルスリテラシーってなに?【2022/5/2~4/6のニュース】

誇大広告かどうかで騒がれていたクレベリン問題に、ひとまず決着がつきました。医療関係者にとっては、ようやく、といったところでしょう。景表法違反の指摘を受けていた空間除菌のクレベリンの販売元である大幸薬品は、3日、違反であることを認めることを発表しました。

弊社商品の表示に関するお知らせ|プレスルーム|大幸薬品株式会社

www3.nhk.or.jp

製品自体に問題はないため、クレベリンの回収や返品は受け付けないそうです。行き過ぎた広告を用いて、コロナ禍という非常事態の中で、クレベリンはこれまで多くの利益を同社にもたらしてきたわけですが、ブランドの毀損という点を除いて、収益だけに目を向ければ「売ったもん勝ち」ともいえる決着に、釈然としない、という人もいるでしょう。

「売ったもん勝ち」であるのは、販売店側であるドラッグストアなども同じです。今後、大量の在庫が、メーカー返品になるのか、店舗で淡々と売り続けていくのかはわかりませんが、いずれにしろ、今までの収益とトータルして”大損”になることはないでしょう。今回の景表法違反は、以前から多くの指摘が外部の識者たちからなされており、現場の販売スタッフからも、眉唾ものとの声が上がっていたものです。一定のヘルスリテラシーがあれば、販売は躊躇するものです。少なくとも、アウト展開(定番の棚とは別に、目立つようにプロモーション展開すること)するものではないでしょう。しかし現実は、山積み販売されていました。

ドラッグストアのヘルスリテラシーは、素人に毛が生えた程度なのでしょうか?これを機に、ヘルスステーションを謳うドラッグストア企業のヘルスリテラシーも、問うても良いのではないでしょうか。

余談になりますが、拙著『その病気、市販薬で治せます』を書いた時、最初の原稿では、大幸薬品の看板市販薬である正露丸について、他の製品よりも紙幅を割いて紹介していました。正露丸には面白い研究データが同社から複数出ているからです。しかし、その後、世界はコロナ禍に突入し、国内では同社のクレベリンに対する姿勢が問題になったことで、この会社の科学的な物の捉え方は、わたしとは随分違うようで、自社試験やデータはどこまで信用できるのだろうかと考えました。結局、校正時に大幅に修正し、正露丸の紹介は大きく削りました。正露丸は個人的には良い薬だとは思っていますが、正直、同社の製品には、今後はあまり関わりたくないなという気持ちになりました。