『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

解熱鎮痛剤「カロナール」が市販薬についに登場する【2023/4/10~4/14のニュース】

大きなニュースです。解熱鎮痛薬の「カロナール」が市販薬になります。カロナールといえば、コロナ対策で一躍有名になった薬の1つ。元々病院でよく処方される薬です。ドラッグストアの棚に、また1つ、「病院と同じ名前の薬」が増えることになります。

第一三共ヘルスケアは4月12日、医療用医薬品「カロナール錠」と同一商標を使用して「カロナールA」の製造販売承認を取得したことを発表しました。発売時期は未定です。

OTC医薬品「カロナールA」製造販売承認取得に関するお知らせ|第一三共ヘルスケア株式会社

病院で処方されるカロナールは、あゆみ製薬という会社が製造販売している薬です。このあゆみ製薬のカロナールの商標を、第一三共が使って市販薬として販売する、というニュースです。商標だけなのか、製造はどこになるのか、といった詳細は公表されていません。

解熱鎮痛剤のカロナールは、コロナ感染拡大下で有名になりました。成分名はアセトアミノフェン。病院で風邪などによく処方される薬の1つです。アセトアミノフェンを含む痛み止めは以前からドラッグストアで販売されていました。しかし、コロナにはカロナール、という情報が広まったことから、お店にカロナールを買い求めるお客さんがやってくるように。「カロナールは医療用なので販売されていません。同じ成分の別の商品でしたらございます」とお客さんに説明する店員の姿が、あちらこちらで見られるようになりました。

今回、カロナールの市販薬販売が決まったことで、コロナのようなパンデミックが再び起きた場合は、カロナールを真っ先に購入する人がたくさん出てくるでしょう。

ただし、病院で処方されるカロナールと、市販薬のカロナールでは、1回あたりの摂取できる分量が異なります。これは現行の法律で、市販のアセトアミノフェンの最大服用可能量が、医療用よりも小さいためです。

さて、カロナールの商標を利用する第一三共ヘルスケアは、ロキソニンシリーズを製造販売している日本有数の市販薬メーカーです。ロキソニンシリーズといえば、医療用のロキソニンに、色々な成分を加えて、「ロキソニンプラス」「ロキソニンプレミアム」といった市販薬オリジナルの製品をいくつも発売しています。その数、いまや5種類。第一三共ヘルスケアのスタイルからすると、あゆみ製薬との契約内容次第では、「カロナールプラス」「カロナールプレミアム」などが登場する可能性は十分にあると考えられます。

アセトアミノフェンの市販薬市場での薬学的な価値は、安全性が高いという点でした。成分そのものの安全性の高さだけではなく、アセトアミノフェン商品はほとんどが単一の成分だけでできているので、「余計なものが入っていない」(あくまで薬剤師目線ですが)という安全性もありました。カロナールにさまざまな成分が付与されたとき、安全性という価値はどうなってしまうのか。薬学的には不明瞭な差分で、多数の商品が登場するのではないか、という心配があります。

「病院と同じ薬が市販薬で買える」という、カロナールの社会的な価値は大きいでしょう。ただし、カロナールと同じ成分のアセトアミノフェンは市販薬市場にたくさんあります。薬剤師の目線で言うならば、新たな薬学的な価値が生まれるわけではないですし、カロナールという新商品がブランドと知名度で選ばれることを前提とするならば、それは利用者が成分に無関心なままであるという不安感もあります。

市販薬には「社会的価値」と「薬学的価値」の2つがあると思っています。この2つを共にうまく満たすことが、社会と消費者にとって有益な経済活動だと、私は考えています。

 

最後に、ドラッグストアにとって大事なニュースを。大幸薬品は、空間除菌のクレベリンの広告が景品表示法違反のため、6億円の課徴金を納付することが報道されました。景表法違反の課徴金としては過去最大額だそうです。

クレベリンはコロナで需要が急増しましたが、その後、広告表現が問題視され、店頭から在庫が引き下げられました。大幸薬品の2022年度決算報告書を見ると、感染管理事業のセグメント損益が-21億円超でした。今回の課徴金で2023はおそらく特損-6億円となるのでしょう。同社はクレベリンのブランド復活を目指していることを決算報告書に明記しています。6億円という数字のインパクトもさることながら、今回の報道で同社が試みているクレベリンブランドの復活が遠のいたことも、痛手になりそうです。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4574/ir_material_for_fiscal_ym1/131649/00.pdf

私としては、お店側は「お客様が求めるから」という古い発想は、もうやめたほうがいいと思います。

だって、本品が景表法に抵触する可能性があると、自覚ありませんでしたか?