アリナミン製薬より「アリナミン メディカルゴールド」が5/9に発売しました。名前も見た目も、まったく新しいですが、実は「アリナミン EX GOLD」と中身は同じです。公式サイトの製品比較一覧からは、すでにEX GOLDが消えています↓
https://alinamin.jp/assets/pdf/component01.pdf
中身は一緒なのに(ちなみに錠剤の大きさも同じ)、名前もパッケージも一新。それなりに合理的な理由があるのでしょうが、今まで使っていた人にとっては、分かりにくいかもしれません。
こういうことが、市販薬では起こります。最近の例を紹介します。
今年の春、体重減らしの薬として有名な「ナイシトールZ」がリニューアルしました。パッケージには、大きな文字で「28,000mg」と書かれるようになりました。飲んだことのある人ならわかるでしょうが、以前のナイシトールZには「5,000mg」と書かれていました。ということは・・・成分が6倍増!?いえ、これは数字のマジックでして、よくよく読むと、
新→「生薬量」28,000mg
旧→「有効成分」5,000mg
という表現の違いだけで中身は変わっていないのです。なんということでしょう。なぜ、表現を変えたのか、その理由は想像がつきます。ナイシトールZは防風通聖散という漢方薬の製品名です。防風通聖散は各社から発売されており、各々のパッケージには、有効成分量が記載されています。医薬品は製造規格が国から定められていますから、有効成分を無限に増やすことはできません。上限があるのです。そうなると、有効成分の量で差別化することは難しくなってきます。実際、ナイシトールZのライバル企業にも「有効成分5000mg」と箱に書かれた商品があり、購入者からするとどちらも同じ有効成分なので違いがわかりません。そこで、有効成分ではなく、生薬量で記載をして、単純な比較ができないようにしたのが、今回のリニューアルではないか、というのが私の想像です。
表記された数字のマジックは他にもあります。ドラッグストアの店頭で、安価な栄養ドリンクで「5000mg」配合と書かれているビンを見たことはないでしょうか。私は最初、これを見たとき、驚きました。というのも、栄養ドリンクのビンに書かれている数字は、それまで「タウリン」という成分の配合量を表すことが一般的でした。ドラッグストアに行けば、「2000」や「3000」という数字の入ったドリンクがすぐに目に入ります。これらはいずれも、タウリンの量を指しています。しかし、タウリンの上限は3000mgだと思っていた私にとって、先述の「5000mg」は衝撃でした。タウリンが5000mgも入っているなんて、と驚きながら、成分欄を見ると、さらなる驚きが待っていました。タウリンは3000mgしか入っていなかったです。そしてよく見ると、5000mgというのは、タウリン以外のアミノ酸類も含めて合計5000mgということがわかりました。その発想はなかった!
別にルール違反をしているわけではありません。新しい視点で商品価値を提示しているという見方もできると思います。でも、成分の詳細を知って、錯覚表記だと感じる人もいるでしょう。一般の方々には、まず気づくことのできない数字のマジックかもしれませんが、薬剤師か登録販売者に聞けば、すぐにわかることです。