『家庭の薬学』

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ヘアケア「パンテーン」と新リアップ「チャージ」の意外な関係【2023/9/4~9/8のニュース】

発毛医薬品リアップの新商品「リアップX5チャージ」が10月20日に発売します。シリーズとしては3年ぶりの新商品で、既存品のリアップX5プラスネオに、パンテノールが追加配合されたことが特徴です。パンテノールはビタミンの一種で、皮膚の状態を良くする効果があるとされています。

https://www.taisho.co.jp/company/news/2023/20230905001383.html

さて、せっかくの新商品ではありますが、成分を見て「またか」と思った薬剤師は多いでしょう。既存の製品に、少しだけ成分を加えて新商品として販売するのは、市販薬の世界の常套手段です。今回もまたその手の新商品か、といううんざり感がついつい出てしまうのが、業界的な感覚です。

ただ、今回のパンテノールと発毛効果は、まんざら根拠がないわけでもないようです。

「パンテーン」というヘアケア商品をご存知でしょうか?どこのドラッグストアに置いてあるような、定番中の定番商品です。

実は、このパンテーンという名前の由来になっているのが、「パンテノール」です。パンテノールとは、プロビタミンB5の前駆物質のこと。1940年、スイスの科学者が、プロビタミンB5を塗った皮膚からより健康的な毛が生えているのを発見。そこで、プロビタミンB5の前駆物質であるパンテノールに目をつけた当時のスイスの製薬企業が、パンテーンブランドを創ったとされています。

https://pantene.jp/ja-jp/pantene-story

今日では、パンテノールはヘアケア品に使われている成分の1つとなっているようで、そのメカニズムの研究もされています。2021年には、毛髪の成長期を延長させる細胞レベルの効果がありそうだ、という基礎研究が報告されています。

Dexpanthenol Promotes Cell Growth by Preventing Cell Senescence and Apoptosis in Cultured Human Hair Follicle Cells

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34698060/

ただ、薬剤師的には、「理屈(論理)はわかった。でも、実際にどれほどの効果が?」という疑問がわくところ。リアップチャージという新商品が、既存品と比べてどれほどの発毛効果があるのかはについては、メーカーはデータを示していません。

そもそも、そんなに良さげな成分だったら、もっととっくに配合されていてもいいのに・・・とも思ってしまいます。

市販薬は市場規模が医療用よりもずっと小さく、しかも、規制が厳しい上に、新規成分が開発しにくい世界です。そのような業界構造では、こうした「ちょっと味変」的な成分が新商品となるのは、メーカーの立場としては、当然といえば当然なのかもしれません。ただ、それはそれとして、薬剤師あるいは生活者の立場から、素朴に意見してもいいと思います、「それって、どれほどの意味があるんですか?」と。ちょっとずつ、何かが変わるかもしれません。

 

今週のニュースをもう1つ。「レスタミンコーワα錠」が9月7日に新発売しました。レスタミンコーワは昔からある製品で、これまでは「レスタミンコーワ糖衣錠」がありました。

https://www.kowa.co.jp/news/2023/press20230907.html

新商品は、パッケージが「かゆみ」をはっきり際立たせたデザインになっています。また、今までは5歳から支えて、大人は1回3錠の服用でしたが、新商品は15歳以上のみ使えて、1回1錠です。これは、1錠に含まれる成分量が多くなったためだと考えられます。

レスタミンは濫用に使われることのある薬です。今までは最大120錠が瓶にジャラジャラと入っていましたが、新商品は瓶ではなく、1錠ずつが袋詰めされているので、少しは濫用しにくいのかもしれません。そうした配慮が理由なのかどうか、個人的には気になるところです。