『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

ヒアレインSがインターネット通販で購入可能に【2023/9/11~9/15のニュース】

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乾き目の目薬「ヒアレインS」は16日付で、インターネット通販での購入が可能となりました。女優の石原さとみさんがテレビCMに登場していた青色の箱の目薬、といえばわかるでしょうか。え?石原さとみさんはロキソニンのCMじゃないかって?たしかにそちらも登場されてますね。でも、目薬のCMにも登場してるんです。ほんとに。ちなみに、彼女は薬剤師が主人公のドラマに薬剤師役で主演したこともあります。薬剤師の友人もいるらしいですよ。そんな幸運な薬剤師がどこにいるのか、薬剤師業界都市伝説の1つです(下図、三角関係の図式)。

今までは薬局やドラッグストアなどの店頭でしか購入できなかったヒアレインSですが、これからはネット上で薬剤師による安全確認を経て購入できます。わざわざお店で購入していた人、購入したくても近所のドラッグストアに薬剤師が不在で購入機会がなかった人たちにとっては、グーッと入手しやすくなったといえます。テレビCMもまた増えるかもしれません。

ただし、ご注意を。このヒアレインSを手に取る人の中には、「なんとなく効きそうだから」という理由で試す人がいます。「乾き目の症状ありますか?」と販売時に症状を尋ねると、「いや、乾いている感じはないんだけど」という人が少なくないのです。

そんなときは、テレビCMの石原さとみさんを思い出してください。CMで石原さんは、砂の上を歩いていました。そしてヒアレインSを指すと、あら不思議、岩と砂だけの荒廃した石原さんの背景に、緑がニョキニョキ生えて潤いが・・・。そう、この目薬の主成分はヒアルロン酸という、目の水分量を保持して”乾き”を癒してくれる薬なのです。疲れ目=乾き目ではありません(乾きからくる疲れ目もありますが)。疲れ目の症状には、目の疲れを癒してくれる成分の入った別の目薬のほうが、症状が緩和されるかもしれません。ヒアレインSを使ってイマイチと感じた人は、継続利用する前に相談してみてください。ヒアレインSはお値段高いですし。

また、眼科でドライアイの治療中の人は、このヒアレインSは使用できません。説明書にそのように記載されていますので、ご承知を。

 

ヒアレインSがネット解禁になった背景についても少し説明しておきます。もともと処方箋なしでは入手できない、病院で処方される薬でした。ところが、今から3年前に市販薬として流通が可能になり、ヒアレインSとして街のドラッグストアなどに並べられるようになりました。もっとも当初は、購入時に薬剤師による安全確認が必要という条件に加えて、「ネット購入不可」「代理人による購入不可(本人が購入する)」「一回の購入で1点まで」という制限がありました。

発売から今年で3年。この3年間でおこなわれてきた副作用調査の結果が、今年7月の厚労省の会合で検討されました。問題となるような副作用は見当たりませんでした。その結果、参加した有識者たちによって、規制を緩和しても良いという結論が下り、先述の3つの条件が撤廃されたというわけです。これらはすべて市販薬制度のスキーム通りで、特例な部分は一切なく、順当、予定調和、な結果です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34324.html

ところで、その3年間でおこなわれた副作用調査の結果、少し気になりませんか?

いくつかの報告書は複数の調査に分けられて記載されている中で、代表的なものを紹介します。発売直後の2020年9月から1年間で、454のモニター施設から報告された1288症例を検討しました。結果は、副作用発現症例数が21例でした。これは症例全体の1. 63%にあたります。

最も多い副作用は、目が痒くなったというもので、5件でした。その次は、目に刺激を感じたものが4件。いずれも、たいした副作用ではありませんでした。深刻な副作用はないのかと気になるところですが、幸い、重い副作用は1件もなかったと報告書には記載されています。

副作用発言症例率の1.63%という数字はどう見ればいいでしょうか。100人に一人以上というのは、ちょっと多いように思うかもしれません。しかし、この副作用報告は、なにかしら関連がありそうだと考えられたものすべてが慎重に集められたものです。因果関係が明確ではないので、実際はこれよりも副作用の発生頻度は低いと考えてよいでしょう(たとえば、使用後16日目にして目に刺激を感じたという報告も、ここでは副作用として報告されています)。

重篤な副作用が一件もなかったことを考えても、ヒアレインSは非常に安全性が高いといえそうです。買いやすくなったヒアレインS。気になったかたは、街の薬剤師に相談してみてください。

 

さて話は変わりまして、今週のニュースをもう一つ。鼻詰まりの成分として日本の市販薬にも使われているフェニレフリンが、米国で錠剤としては効果がないとされた、という話が報じられました。フェニレフリンの鼻詰まり効果ついては怪しそうだという海外論文は以前からあり、一部の薬剤師の間では知られた話でした。生活者の99%は知らない情報だったと思いますが、薬剤師と話すと、こういうニッチな先取り情報も知ることができるかもしれません。

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