『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

処方薬「ディレグラ」が「アレグラFXプレミアム」として発売【2024/1/15~1/19のニュース】

2024年花粉症シーズンの、最大のニュースです。

病院で処方されてきた花粉症薬の「ディレグラ配合錠」が、市販薬になりました。製品名は「アレグラFXプレミアム」。メーカーが公式のリリースを発表していないという、ちょっと奇妙な出足ですが、私の周りでは今週から発売がスタートしてます。5日分で約2000円という超高級価格で、既存の花粉症薬「アレグラFX」の上位版という位置付けです。もっとも、上位になるのは「効果」だけではなく、「注意事項」で守るべきハードルも一気に上がります。今回は、この新商品の特徴を紹介します。

鼻づまり効果を強化した新製品

アレグラFXプレミアムは、既存のアレグラ(成分名:フェキソフェナジン)に、ある成分を加えた新商品です。その成分とは「プソイドエフェドリン」。交感神経を刺激することで、鼻粘膜の血管を収縮させ、充血やむくみを抑えて鼻詰まり症状を改善してくれます。「パブロン鼻炎」など昔からある花粉症薬にも含まれていた成分ですが、アレグラFXプレミアムに含まれる1日量は、例えば「パブロン鼻炎カプセルSα」のなんと2倍量。しかも、このプソイドエフェドリンと、眠気の出にくい「フェキソフェエナジン」との組み合わせは、市販薬としては国内初です。プソイドエフェドリンが配合されている分だけ、鼻詰まりへの効果はアレグラFXよりも高いことが期待できますし、実際の臨床データもあります。

もともとアレグラ、アレジオン、クラリチンといった有名どころの花粉症薬は「眠くなりにくい」という利点がある一方で、鼻詰まりへの効果は弱いとされていました。アレグラFXプレミアムは、その弱点を補った新しい薬といえるでしょう。

使用上の注意事項は爆増

一方で、いいことばかりではありません。プソイドエフェドリンを配合したことで、使用上の注意も通常のアレグラと比べて爆増します。高血圧や心臓病、糖尿病などの持病を持つ人は、使ってはいけないと説明書に記載されています。交感神経を刺激するので、これらの検査数値が悪化する可能性があるためです。

また、持病がなかったとしても、交感神経を刺激する成分を多く盛り込んでいるので、継続服用するには、今までの花粉症薬よりもずっと注意が必要です。そのため、アレグラFXプレミアムの説明書には、こう書かれています。

「鼻づまりの症状が強い期間のみの最小限の期間にとどめ、鼻づまりの症状の改善がみられた場合には、すみやかに抗ヒスタミン剤単独療法などへ、お切り替えください」

”抗ヒスタミン剤単独療法”とは、従来のアレグラやアレジオン、クラリチンなど、プソイドエフェドリンを含まない花粉症薬を指します。要するに、鼻詰まりがしんどい時だけ使って、あとは通常のアレグラなどを使ってくださいということです。

また、プソイドエフェドリンを含む製品は、「濫用の恐れがある」として、一人一点までしか購入ができません。アレグラFXプレミアムも同様に、一度に購入できるのは一箱のみです。

超高価格で服用は「空腹時」推奨

こうした特徴を反映するかのように、その価格は継続購入が難しいほどの超高額です。ある店舗では「アレグラFXプレミアム」20錠入り税込1980円、「アレグラFX」28錠入り2074円となっていました。一見、価格に大差はなさそうですが、実は前者は1回2錠で、後者は1回1錠。つまり、アレグラFXプレミアムは5日分で約2000円ということになります。超高級花粉症薬の誕生です(アレグラFXは2週間分で2000円程度)。

また、服用方法は「空腹時」である点も注意です。これはディレグラに含まれるフェキソフェナジンが、食後服用だと体への吸収が減少してしまうというデータがあるためです。

アレグラFXプレミアムの”元ネタ”である「ディレグラ配合錠」は、2013年に医療用医薬品として上市した製品です。今まで病院で処方された経験がある人もいることでしょう。近年は、「プソフェキ」という名前のジェネリック医薬品も登場しています。

このように病院で処方されていた薬が、市販薬として発売されることを「スイッチ化」と呼びます。「アレグラFXプレミアム」の登場は、スイッチ化が加速する日本の象徴と言えるでしょう。なお、本製品は要指導医薬品というカテゴリーに属し、購入時に薬剤師による安全確認が必須となります。