『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

遅れてきた大本命、「カロナール」が市販薬としてついに発売【2024/1/8~1/12のニュース】

解熱鎮痛薬として病院でよく処方される「カロナール」が、市販薬として1月24日から発売されます。商品名は「カロナールA」で、価格は24錠(24回分)で税込1078円です。やっときたか、大本命。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/release/calonal-a240111.html

病院で処方される医療用のカロナールとカロナールAの違いは「有効成分の量」です。医療用のカロナールの錠剤には、「カロナール錠200」「カロナール錠300」「カロナール錠500」の3種類があります。後ろの数字が有効成分であるアセトアミノフェンの量を表します。例えば「カロナール錠200」なら、「アセトアミノフェンが200mg含まれている」ことを意味します。風邪やインフルエンザの発熱・倦怠感などに対して、病院ではカロナール錠が1回量300〜500mgの範囲で処方されることが多いでしょう(400mgは200mg×2錠で処方)。

では、今回発売した市販薬の「カロナールA」の有効成分は何mgでしょう。答えは300mgです。カロナールAの用法は、1錠300mgを1回1錠、1日3回まで。病院で処方される1回量と比べると少なめです。市販薬ゆえの配慮でしょう。

さて、今回の商品、一番のインパクトは「あのカロナールが市販薬になった!」です。コロナ禍を思い出してみてください。「新型コロナにはアセトアミノフェンが良いらしい」というメディア情報から、「カロナールをドラッグストアで探そう」という流れが起きました。私の勤務していた店にも、「カロナールありますか?」という問い合わせが来ました。

当時、カロナールは病院で処方される薬の名前であり、市販薬には存在しませんでした。代わりに、市販薬には別のアセトアミノフェン製品がありました。「タイレノールA」です。タイレノールAは、コロナ禍が発生する前には、どのドラッグストアにも大抵置いてある、そしてほとんど唯一の大人用のアセトアミノフェン製品でした。コロナ前までは、アセトアミノフェンは、市販薬市場では存在感うっすうすの、人気のない解熱鎮痛成分だったのです。それが一躍、スター(?)に。そこからわずか数年で、多くのメーカーが、アセトアミノフェン製品を発売するようになりました。

そんなわけで、カロナールAは同じ成分、同じ分量の解熱鎮痛薬がすでに多く存在する中で、”遅れてきた大本命”として発売されるわけです。

今後は「カロナールありますか?」とドラッグストアで尋ねれば、「ありますよ」という答えが返ってくることでしょう。医療用とは使用方法や用量が異なることを理解した上でお使いください。カロナールAが病院の薬と同じ成分で、ちょっと量が少ないだけなら、1錠を3分の2に割って飲めば、300mg+200mgで500mgになるんじゃね?とか、いっそ2錠飲んで600mgで強くしちゃえばいいんじゃね?とか、考える人がいるかもしれません。

アセトアミノフェンは比較的安全性の高い成分とされていますが、それは、適正量を継続して守った上での話です。

2010年代の米国では、このアセトアミノフェンの副作用による肝障害が大きな問題になりました。急性肝不全と診断された患者の48%が、アセトアミノフェンが原因であるとさえ言われました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4913076/

また詳細は不明ですが、最近は韓国で、アセトアミノフェン系の解熱薬による若年の中毒者が増えているというニュースもありました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/724e9b93840d4c411c80b7a4b4720760230dc5eb

もちろん、日本で、適切に服用しているのであれば、肝障害や中毒のリスクは限りなく少ないでしょう。ただ、「薬」ですから、絶対の安全はないということです。

過ぎたるは、及ばざるが如し。自己流治療は控えて、用法用量を守ってお使いください。