『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

震災時に役立つ市販薬を考えるモン

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震災に備えて常備する薬とは?

熊本で大地震が起きた。ここ数日、ぼくの店では傷薬の売上が伸びているような気がする。イザという時のために常備薬として購入しているのかもしれない。被災地の状況をテレビや新聞報道で知り、明日は我が身と不安を覚える。地震列島日本で生きるとは、そういうことかもしれない。

だから、その日に備えて、常備すべき市販薬を考えてみたい。

 

被災地の避難所を回って感じたこと

高血圧、糖尿病、心臓病・・・普段病院で薬を処方してもらう病気は、市販薬では対処できない。擦り傷ならマキロンなどの消毒液で済むが、骨折のような大ケガではお手上げ。

ただ、被災者の中には、大病もなく、大けがもせず、でも、薬を求める人たちがたしかに存在する。

東日本大地震が起きた時のことだ。地震発生から一週間あまり経ったころ、ぼくはボランティア薬剤師として被災地に入り、全国から集まった医師、看護師、薬剤師たちと共に、避難所を回り薬を配った。

よく覚えてるのは、アレルギーの薬「アレグラ」と、漢方薬の「葛根湯」だ。

 

活躍した 「アレグラ」と「葛根湯」

3月。ちょうど、花粉症の時期だった。花粉症がつらいと訴える被災者達がいた。「花粉症がひどくて・・・」。命に関わる症状ではない。でも、目のかゆみや鼻水に悩まされるのは、本当につらいことだ。被災で極度のストレス下にある中で、少しでも体の不快感を取り除くことが、とても重要な意味を持つように感じた。

避難所を回る中で、最もたくさん被災者の手に渡った薬の一つは、漢方薬の葛根湯だった。避難所生活で、体のあちこちが痛い、肩コリがひどいという人々がたくさんいた。特に高齢者に多かった。痛み止めなら、葛根湯よりも効き目の優れた薬はたくさんある。でも、高齢者の服用歴もわからないし、万が一副作用が起きても、医療従事者がフォローできない。そこで医師達が選んだのが葛根湯だった。葛根湯が適切かは議論があろうが、物も情報もないなかで、ベターな選択だったと思う(葛根湯に副作用がないということではない)。

葛根湯はどんどん処方され、巡回途中で在庫が底をつきた。

 

ロキソニン、センナも需要が高かった

被災のかたちは多様だ。亡くなった人。大きな怪我をした人。怪我はしなかったけど家を失った人。ぼくが訪れた避難所には、体こそ健康だが日常を失った人々がたくさんいた。彼らに必要なのは、腰痛や花粉症の薬など、日々の不快感を和らげるものだった。市販薬で間に合うものだった。アレグラも葛根湯も、平時のドラッグストアで販売している薬だ。

被災地で必要な市販薬とはどんなものか。

岩手県で救援を行った昭和大学薬学部の調査報告「医薬品需要の動向からみた被災地に必要な医薬品情報」によると、現地(岩手県下閉伊郡山田町)で医療従事者から被災者へ多く渡った上位21品目の中には、市販薬として購入できるロキソプロフェン(解熱鎮痛薬のロキソニン)や、センノシド(便秘薬のセンナ)がある。なるほど、便秘薬も必要かもしれない。センナよりも効き目がマイルドな薬もあるが、効き目がなければ元も子もない。

http://www.showa-u.ac.jp/sch/pharm/showa_jour_pharm/back_number/frdi8b000000i5yu-att/2-2_Tomoko_HANDA.pdf

あるいは、薬剤師のサイト「アポネット研究会」の記事「災害時におけるOTC医薬品の役割」も読みごたえがある。海外時事例も紹介しつつ、日本の災害時に必要な市販薬を挙げている。

災害時におけるOTC医薬品の役割 | アポネットR研究会・最近の話題

 

イチオシの薬は「五苓散」

上記はいずれも、不特定多数の被災者を想定した備蓄・配給薬について論じている。ぼくが思いつくイチオシは、漢方薬の「五苓散(ごれいさん)」だ。

下痢、胃腸炎、頭痛、むくみ、など幅広く使える。特にお腹の症状に対しては、病院ではノロウイルスによる下痢や吐き気にも処方されており、一般的な下痢止め薬よりも使い勝手がいいと思う。副作用もあまり心配しなくていい。市販薬として買える。漢方薬だけど、飲みやすい錠剤もある。 

【第2類医薬品】クラシエ五苓散錠 180錠

【第2類医薬品】クラシエ五苓散錠 180錠

 

 

blog.goo.ne.jp

 

常備薬の相談を薬剤師にしてみよう

これらをヒントにしながら、ぼくら(一般人)は、まずは自分と家族のことだけを考えよう。自分たちが被災したら何が必要か。

健康な成人男性であるぼくは、五苓散以外に次の薬を挙げたい。

・解熱鎮痛薬:なんにでも使えて便利

・整腸成分が入った胃腸薬:お腹がゆるくなったとき、胃が痛い時に一石二鳥

・下痢止め:症状が悪化するリスクがあるが、避難所でトイレを何度も使うのは嫌

・便秘薬:ストレスで便秘になるかも

・風邪薬:とりあえず、持っていて損はない。鼻水とか嫌だし

・抗アレルギー薬:花粉症だし

・傷薬:なんでもいい

・ビタミン剤:栄養状態の悪化

・口内炎薬:これ以上ストレスを感じたくないので、さっさと治したい

・マスク:実はこれが一番必要かも。花粉症対策、風邪防止と一石二鳥

 

・・・かなり多くなってしまった。

みなさんは、どんな市販薬を選ぶだろうか。ぜひ、薬局やドラッグストアで相談してみてほしい。服用に注意すべき点と共に色々教えてくれるだろう。これが実は大事だ。

最後に、熊本で被災された皆様にお見舞い申し上げる。自分の生活の中で何ができるだろうかと考えた末、今日は妻に5000円を渡し、銀座の熊本館(熊本県東京事務所)で募金してくれと伝えた。

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