『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

風邪薬「麻黄附子細辛湯」がツムラから市販薬で発売【2022/2/21~2/25のニュース】

大きなニュースがありました。ツムラが市販薬に新しく5処方を追加し、2月21日に発売しました。OTC薬はツムラではなくクラシエを品揃えているドラッグストアが大半だと思いますが、クラシエとツムラの両方を置いている店もあります。

今回発売したのは次の漢方薬です。

・大建中湯→お客さんから時々聞かれます。ツムラは小建中湯はあるのですが大建中湯はありませんでした。

・抑肝散→これは他社からも出ています。

・清心蓮子飲→これも他社から出ていますね。

・清肺湯→ダスモックが有名ですね。

・麻黄附子細辛湯→これを置いている店は少ないのでは。風邪薬の隠れた定番品。

ツムラによれば、今回の5処方は、お客様からの問い合わせの多かったものだそうです。個人的に一番のニュースは麻黄附子細辛湯です。風邪薬としては非常に有名な漢方薬であるにもかかわらず、市販薬で見ることは滅多にありません。一応、クラシエからも麻黄附子細辛湯は発売されているのですが、多くのドラッグストアにある「漢方セラピー」ブランドではないので、店頭で見ることはそうそうないのでは。

麻黄附子細辛湯は老人や虚弱で冷え性の感冒によく使われるとされています。市販薬だと、高齢者の感冒に適した漢方薬が少ないので、これは重宝すると思います。傷寒論には次のように書かれています。

「少陰病、始め之を得て、反って発熱、脈沈の者、麻黄附子細辛湯之を主る」

(少陰病から発症するのに、発熱があって、脈沈の人に使う)

頭痛・発熱・咽頭痛などの風邪症状に使えます。

生薬成分の量はツムラの医療用の半分です。医療用と全く同じではありませんのでご注意を。1日2回服用。ツムラのOTCの番号は全て医療用と同じです。

 

長期的には、漢方薬もその一部は保険外になる可能性があります。そんな中で、今までは力を入れてこなかったように見えるツムラのOTC薬。同社の売上の90%は医療用という構図も、10年後にはさて・・・?リフィル解禁を見てると時代の流れは予想以上に急進的だと言えるのではないでしょうか。

 

ちなみに、ツムラは決算説明書がとても面白いです。コスト構造やキャッシュフローに興味がない人でも、新型コロナで増えた処方、減った処方などもまとめられており、読んでて「へ〜」となります。新型コロナ拡大以降の漢方薬処方のトレンドを知る補助になると思います。詳細は元サイトを読んでいただくとして、ここでは直近の報告内容をサクッと紹介します。

<処方機会が増加した疾患>

精神疾患(精神不安や不眠):加味逍遙散 加味帰脾湯 半夏厚朴湯 柴胡加竜骨牡蛎湯 など

めまい(心身不調によるめまい):半夏白朮天麻湯 苓桂朮甘湯

皮膚疾患(マスクによる肌荒れ):桂枝茯苓丸加薏苡仁、十味敗毒湯、清上防風湯、荊芥連翹湯など

補剤:補中益気湯、十全大補湯

<処方機会が減少した疾患>

感染予防対策による呼吸器疾患の患者数減少:葛根湯、麻黄附子細辛湯 小柴胡湯加桔梗石膏、桔梗湯など

https://pdf.irpocket.com/C4540/OMfg/HsRY/ztbF.pdf