『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

知る人ぞ知る声枯れ薬「響声破笛丸」が「コエキュア」の名で発売【2023/8/7~8/11のニュース】

世の中はお盆休みに突入しました。最近は、どこの喫茶店に入っても、咳や鼻をすすっている人がチラホラ。コロナ禍を経て、私が敏感になっているだけでしょうか?お盆中もコロナには気をつけたいですね。

さて、今週の市販薬ニュースです。2つの珍しい漢方薬の発売が発表されましたので紹介します。

まず1つめ、声枯れに効く薬「コエキュア」が、小林製薬から8/23に発売です。成分は、漢方薬の響声破笛丸(きょうせいはてきがん)というもの。即効性のある声枯れの漢方薬として大変有名で、ファンもいるのですが、医療用にはない(病院では処方されない)うえに、取り扱っているメーカーが少ないため、最近ではあまり知られていないかもしれません。

https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2023/20230809/

響声破笛丸には、レンギョウ、キキョウ、カンゾウといった、喉の不快感に効く成分としてお馴染みのを中心に構成されています。活躍どころは、”声が枯れて困るとき”です。”喉が痛いとき”ではありません。ここがポイント。カラオケのやり過ぎだったり、夏の甲子園で声援を頑張りすぎたりして、声が掠れてしまった場合です。痛みがあるならば甘草湯、風邪症状プラス喉の痛みがあるなら銀翹散など、それぞれ使えるメジャーな漢方薬が他にあります。

響声破笛丸は、いくつかのメーカーから発売されています。行政の(PMDA)データベースに登録されているのは、北日本製薬、ジェーピーエス、松浦薬業の3社の製品。たった3社!ひと昔前は、大手のエスエス製薬からも発売されていましたが、のちに市場からフェードアウト。今回、多くの販路を持つ小林製薬という大手メーカーが復活させたことで、街のドラッグストアでも入手しやすくなりそうです。よかったですね。

https://www.ssp.co.jp/uploads/nr/20100826-1/20100826-1.pdf

小林製薬のコエキュアが加わったことで、響声破笛丸の製品は4つになりました。

さて、この4製品間の主な差は2つあります。まず、松浦薬業が、他よりも成分量が少ないこと。そして、小林製薬のコエキュアだけが服用可能年齢が他と異なること。コエキュアは7歳以上ですが、同じ成分の他のメーカーはいずれも2歳未満でも飲めるという記載です(ただし製品によって最低年齢の記載はやや異なります)。ちょっと不思議ですね。ただ、響声破笛丸は体質に関係なく服用できますから、比較的使いやすい漢方薬です。強いていえば、カンゾウが含まれていますので、他の漢方薬も使っているときは、少し注意が必要です。薬剤師か登録販売者にご相談ください。

 

さて、続いてもう1つの新製品。こちらはさらに珍しい漢方薬です。その名も「滋腎通耳湯(じじんつうじとう)」。クラシエから8/24発売です。

https://www.kotaro.co.jp/kampo/explain/jijintsujito-exp/

こちらは響声破笛丸よりもずっと珍しい漢方薬です。個人的には珍獣レベルです。その効果は加齢やストレスに伴う聴力低下や耳鳴り。耳鳴りに困っている人は多いですから、興味があるかたも多いでしょう。

耳鳴りというと、市販薬では苓桂朮甘湯や七物降下湯が有名です。あるいは、2022年に小林製薬が発売した「ナリピタン当帰芍薬散」という薬もあります。ただ、病院では、これら以外の漢方薬のほうが耳鳴りの治療にはよく使われたりしています(市販薬では適応がないので記載がない)。そういう意味では、まずは受診したほうがよいとは思いますが、さまざまな事情でとりあえず市販薬で対処という場合は試してもいいでしょう。

先に挙げた耳鳴り向け漢方薬は、いずれも構成生薬が異なり、一口に耳鳴りと言っても、用いるうえで適した体質が異なっています。少しだけ説明をすると、滋腎通耳湯は血(けつ)を補う四物湯ベースで「七物降下湯」に似てそうですが、滋腎通耳湯の症状では腎虚が特徴です。腎虚は高齢者に起きやすい。メーカーの製品サイトで「加齢性難聴」に触れているのは、そのためです。また、体質は「体力虚弱」向けとなっています。漢方薬は非常に複雑。興味がある人は、漢方薬に詳しい薬剤師か登録販売者に相談すると良いでしょう。

コタローの解説も参考までに↓

https://www.kotaro.co.jp/kampo/explain/jijintsujito-exp/

 

最後に、市販薬のインターネット販売が増えているという話も紹介します。

主な調査結果を見ると、国内における、25年のOTC医薬品のEC市場規模(BtoC、メーカー出荷金額ベース)は885億円になると予測。OTC医薬品のEC市場規模は、20年から25年までの年平均成長率が9.5%で成長する見通しを示した。

https://www.yakuji.co.jp/entry104609.html?utm_campaign=shareaholic&utm_medium=twitter&utm_source=socialnetwork

市場全体は横ばいですが、ネット通販市場は拡大していくという予測です。この傾向は定められた未来だと思います。