
現場からの提案、「パス&ポジティブ」記事
先月参加した市販薬のイベントでお話したことの続きです。前回のブログでは「市販薬情報は不足しており、いまは総量を増やすことが大切」ということを書きました。
では、読者にとって有益な市販薬情報とは、どのようなものでしょうか。ここからは市販薬販売の現場とブログを行き来する私から、いまのところ読者にとって有益なのは「現場へのパス型記事」と「ポジティブ記事」ではないか?という提案をさせていただきます。
提案1:現場へのパス型記事を書く
一つ目の提案は「現場へのパス型記事」というものです。
薬は個人の体調・体質に合わせて選ぶものです。「一般論」ではなく「自分にとってベストな方法」が大切。ところが、SNSの情報発信では一般論しかいえません。そのうえ、ツイッターなどの少ない文字数で情報拡散を行うものは、誤解や齟齬が生じやすいですよね。
ネット薬剤師信用できる?リアル薬剤師は信用できない?
一人の薬剤師が「●●薬はキケン!」とツイートした場合、それを読んだ人は「知らなかった。近所のドラッグストアの薬剤師は教えてくれなかった。真実はネットでしか得られない」と考えてしまうこともあるでしょう。その結果、現場の薬剤師には相談せず、ネットの情報を自己流に解釈して薬を選ぶかもしれません。
こうした状況を生まないために、情報の発信者は「読み手をネットの情報だけで完結(満足)させない」ことを意識した方がよいと思っています。
ネット情報で満足するのはキケン!
そこで私が心掛けているのは「現場へのパス型記事」を書くことです。私のブログは開設当初からプロフィール欄に次の一言を入れています。
当ブログに書かれた情報は基礎的なものばかりです。現場の薬剤師・登録販売者は、このブログの3倍の情報量は持っているはずなので、ぜひ色々質問することをお勧めします。
ブログの記事は薬の特長を紹介すると共に「この点が気になる人がぜひ、お店の薬剤師に質問してください。色々教えてくれます」と書くことで、読み手が薬局・ドラッグストアの薬剤師に質問してみようかな?と思っていただけるように心掛けています。
「ネットで満足させずに、現場の薬剤師にバトンタッチする」。
そんな記事を目指しています。
提案2:生活に役立つポジティブ記事を書く
私からのもう一つの提案は「ポジティブ記事」です。いまのネット上の市販薬記事は、どちらかというと市販薬に懐疑的でネガティブな記事が多いと感じます。これは、市販薬のプレーヤーが少ないため仕方のないことだと思います。
「懐疑しつつうまく使おう」という生活に直結する記事の供給は、現状ではとても少ないと思います。しかし、市販薬を議論するには、ネガティブだけではなくポジティブな情報も必要ではないでしょうか?
市販薬は意外と役に立つ
市販薬は意外と役立つものです。風邪なら受診せずに風邪薬でも大丈夫。インフルエンザも市販薬で対処できるかもしれません(やや議論はありますが)。これからの季節でしたら花粉症にも有効です。
花粉症薬は数年前に安価なフェキソフェナジン(アレグラ)が発売されたことで、経済コストが劇的に下がりました。さらにステロイド点鼻薬(ベクロメタゾンプロピオン酸エステル)も、以前は年間1か月しか使えませんでしたが、いまは3カ月で使えるようになりました。市販薬でも、医師が処方するようなガイドライン(標準治療)に沿った薬剤選択が可能になっています。
実際、先日私を取材していただいたヤフー記事「ドラッグストアの風邪薬「値段が高いほうが良い」は誤解?薬剤師からのアドバイス」は、市販薬のポジティブな面に焦点を当てた記事で、比較的よく読まれたそうです。市販薬のポジティブ記事の需要は確実にあると思います。
たくさんのご質問ありがとうございました
以上をまとめますと、いまのところ読み手にとって有益な市販薬の情報は「現場へのパス型記事」と「ポジティブ記事」だと思います(”いまのところ”と書いたのは、有益性は状況・世論とともに常に変化するからです)。
イベントでは、ディスカッションの時間が設けられていて、質疑応答の内容は大変勉強になりました。事前の打ち合わせでは主催者側から「質問がでないケースも多々あります」と聞いていましたが、実際には質問の挙手が途切れることはなく、時間の都合で全員にご質問いただけませんでした。もっとだくさんの質問を聞きたかったです。
ご参加くださりました皆様方、お声掛けくださった運営の皆様方、ありがとうございました。
今後とも市販薬に関心を持っていただけると幸いですっ(市販薬は書くのが難しいですが、それゆえネタの宝庫です)!