『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

キューピーコーワαプレミアムが新発売。追加された成分は仙人が飲んでたアレ?【2021/4/5~4/9のニュース】

今週のニュース。2つの新商品があります。

1つ目は池田模範堂からハウスダストなどによるかゆみの薬「ムヒダストメル」。4月5日に発売した塗り薬です。面白いのは、ユーカリ油を有効成分として使っていることです。

今年の1月に日経新聞でも取り上げられていましたが、同社は世界で初めてユーカリ油を塗ることでアレルギー反応を抑えることとそのメカニズムを発見しました。ユーカリ油がマスト細胞の破裂を抑えてアレルギー反応を引き起こす物質の放出を抑えるという仕組みです。今回はこの研究成果を生かした第一弾の製品と思われます。

https://www.ikedamohando.co.jp/pdf/20210119.pdf

蕁麻疹には既存の塗り薬はあまり効果が期待できないのですが、このユーカリ油はどうなのでしょうか。蕁麻疹だけを想定している訳ではなさそうですが。いずれにしろ、自社で研究したオリジナル性の高い新商品で、面白いですね。一度は使ってみたいです。

もう1つ新商品があります。キューピーコーワαプレミアムが4月6日に発売となりました。旧来のキューピーコーワαは無くなります。「○○プレミアム」系市販薬がまた1つ爆誕です。

特徴は「トチュウ」と「シャクヤク」が滋養強壮成分として含まれていること。

プレミアムの成分は以下のとおり。数字の単位はミリグラム。

トチュウ200・シャクヤク120・エゾウコギ350・オウギ240・オキソアミヂン その他ビタミン、カフェイン

旧品の成分は以下のとおり。

トウキ100・エゾウコギ350・オウギ240・オキソアミヂン その他ビタミン、カフェイン

旧品との大きな違いは、2点。①トチュウとシャクヤクが入ったこと②トウキが抜けたことです。

トチュウとシャクヤクは「あれ?」と思いました。私の中ではトチュウといえばダイエット目的や生活習慣病がきになる方向けの「杜仲茶」、シャクヤクはこむら返りなどに使う「芍薬甘草湯」の生薬です。いずれも滋養強壮のイメージはなかったのですが・・・。

こんな時は「生薬単」という本が役立ちます。

この本によると、トチュウの薬効は「強壮、強精、鎮痛」です。確かに、強壮成分なのですね。名前の由来は古典「本草綱目」によれば、トチュウの木の皮を砕いて煎じたものを毎日飲んでいた仙人の名前が「杜仲」だったことに由来するそうです。昔から健康茶として知られていたようですが、現在は植物に含まれる配糖体「ゲニポシド酸」が血圧コントロールに関わる成分としてトクホになっているそうで、それで小林製薬や山本漢方製薬から杜仲茶の健康茶食品が出ているわけですね。

それはともかく、コーワのサイトではトチュウの効果は「抗ストレス」と紹介されていました。

小林製薬の濃い杜仲茶 (煮出し用) 3g×30袋

小林製薬の濃い杜仲茶 (煮出し用) 3g×30袋

  • メディア: ヘルスケア&ケア用品
 

もう1つの成分であるシャクヤクは、多くの漢方薬に使われているメジャーな生薬です。芍薬甘草湯に代表されるように、筋肉の痙攣を抑えて痛みを和らげる鎮痙成分として知られています。前出の生薬単でも薬効は「収斂、鎮痙、鎮痛」となっています。元気を出すというよりも、疲れで緊張した筋肉を和らげてくれるというイメージではないかと思います。

ところで、個人的に驚きだったのがこの新商品にトウキが含まれていないことです。旧品では成分表の1番最初に記載されていた、キューピーコーワを代表するような成分だったのですが、これがプレミアムでは姿を消しました。トウキは東洋医学独自の概念である「血」を補う代表的な「補血」の生薬です。当帰芍薬散をはじめ婦人科系の漢方薬に多用されています。私自身、今までキューピーコーワシリーズはこのトウキが入っていたので女性に勧めることが多かったのですが、プレミアムはそういう訳ではなさそうです。ただ、漢方の老舗、小太郎漢方製薬のサイトでは芍薬は「駆瘀血」として紹介されていますので、トウキの代替と考えても良さそうですね。

まとめると、抗ストレス作用のあるトチュウと、今までのトウキの代わりに芍薬を入れたのが新しくなったプレミアム。コーワのサイトによると、キューピーコーワαと比較して、ストレスからくる疲れに対してオススメのようです。

ところで、生薬の効果を語るときに、よく「抗ストレス」効果というのを見かけますが、これが具体的に何を指すのか、いまいちわかっていません。巷にある「免疫力強化」のように、ふわっと広く使われている言葉である印象です。