大きなニュースです。市販薬の自動販売機の実証が、新宿駅で5月からいよいよ始まることが発表されました。購入までの流れは次の通りです。
①自販機のタッチパネルで商品選択
②データが薬剤師・登録販売者の元へ(自販機の近くの店舗に在籍)
③問題なければ自販機でそのまま決済
詳細な資料はこちらです。
https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210423008/20210423008-2.pdf
https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210423008/20210423008-1.pdf
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/underlyinglaw/sandboximage827.pdf
正直、どのような法解釈でサンドボックスにしたのかは、資料を読んでもはっきりとはわかりませんでしたが、規制改革につなげるための実証としては非常に大きな動きです。
自販機の斜向かいが店舗販売業の登録店舗になるようです。そうなると、在庫管理している場所(自動販売機)と、管理すべき資格者が離れているという、一見すると、従来の法令と照らして非常に興味深い運用になります。自動販売機とドラッグストアは道路を挟んでいますから、本来なら構造設備基準に抵触すると思うのですが、資料によるとここは法令と照らし合わせてOKということになっています(なぜ?)。
もっとも、構造設備基準の云々は、枝葉の話で、ここで一番大事なのは、在庫管理している場所と、資格者が離れているという点だと思います。規制改革の行先も、この点にあるのではないでしょうか。そうでなければ、ドラッグストアのそばに自販機があるというだけの話になってしまいますから・・・。私が以前、仕事で行政に確認した際は、店舗販売業の許可取得場所と在庫保管場所が別々なのはNGであるとの回答を得たように記憶しています。ただ、今回改めて考えてみると、自動販売機は資格者以外の手に触れられない状態で薬が保管されることになりますから、いってみれば配達員が梱包された市販薬を自宅に届けるのと同じであるということで、今回の自販機は現行法をストレッチさせれば許容であるという考え方も、できなくはないように思います。
そう、自動販売機というのは、実は、市販薬と非常に相性が良いのかもしれません。24時間、自販機の提携している薬剤師とコンタクトが取れるようになっていれば、消費者はいつでも薬を手に入れることができます。店舗のように営業時間に左右されず、ネット通販のようにリードタイム(配送までの時間)がかからず、すぐ、その場で現物で手に入るのです。これはすごいアドバンテージです。薬剤師の郡司さんに教えてもらったところによると、海外では緊急避妊薬の自動販売機が設置されている地域もあるそうです。
米大学が自販機でコンドームや緊急避妊薬(アフターピル)などの販売を開始 / 学生の声「いざという時に役立つ」など | ロケットニュース24
近年、24時間営業の薬局・ドラッグストアが増えています。深夜も対応できる薬剤師が増えると、自動販売機のメリットはさらに増します。例えば24時間営業の東京のドラッグストアに勤務する薬剤師が、遠く離れた北海道網走の自動販売機を通してロキソニンやガスターを販売できるのですから。
市販薬にとっては古いようで新しい、この自動販売機という販売チャネルで、大正製薬がどこを目指しているのか、今後の展開がとても楽しみになってきました。
ただし、その際のセルフメディケーションを、社会全体でどう捉えるのか、という問題は、これは昨年のブログに書きました通り、課題として残ることになります。
「駅改札内におけるOTC販売機を用いた一般用医薬品販売の実証」を開始|大正製薬
今週のそのほかのニュース。「Vロートプレミアム」シリーズの目薬が、わかりやすく選びやすいデザインにパッケージをリニューアル。本日28日から全国のドラッグストア等で順次発売とのこと。肝心の成分は変更なしのようですね・・・(でもJAN変更されているのでご注意を)。