『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

抗原検査キットとヘルスリテラシー問題【2022/8/8~8/12のニュース】

厚労省が認可しているコロナの抗原検査キットを、インターネットで売れるようにするという報道がありました。どのような制度でネットで売れるようにするのか不明ですが、市販薬にする方向で動いているようです。市販薬の場合は正攻法でいくと、最初の数年は要指導医薬品という扱いでネットでは売れませんので、今年からすぐにネット販売できるわけではなくなります。そこも気になります。来週17日に厚労省で検討会議が開催される予定です。

厚労省が認可している検査キットが広く流通することは、私は好ましいことだと考えます。先日のラジオでもお話しましたが、研究用と厚労省認可の抗原検査キットの違いを理解していない人は、まだまだたくさんいます。抗原検査とPCRの違いもご存知ないまま購入しようとするかたもいます。自治体主導で無料の抗原検査を実施している場所もありますが、街中で売られている研究用で済ませてしまう人もいます。

アマゾンのレビューやツイッターで検索していただければすぐにわかりますが、陽性者が精度99%以上と記載された研究用の抗原検査を使って陰性だったという声が複数あります。商品に記載された精度表記は自社調査なので基本的には参考にはなりません。研究用キットを扱う店があることについては、厚労省認可製品が入手しにくいことから、「ないよりはマシ」という意見があるようです。しかし私は、これには賛同できません。研究用の場合、陰性であっても、参考にならないからです。にもかわらわず、検査で陰性だった、という証拠にして社会活動を始めている人は私の周りにも見受けられます。止むを得ず研究用で、という場合も、当然あるかもしれませんが、実際は多くの人が、研究用と医薬品の区別もつかず、また、研究用でも陰性であれば良しとし、研究用を販売している企業がどのようなものかも知らずに、利用しているのです。正直、研究用こそ扱い注意であり、薬剤師による販売が必要であるとすら感じます。

企業への信用度は問題にすべきだと思います。2021年4月に読売新聞がこう報じています。

神奈川県が福祉施設職員らに実施している新型コロナウイルスの集中検査を巡り、検査を行っていないのに「陰性」と通知したり、検査キットを過剰に配ったりするミスが計223施設であったことが分かった。県は業務管理システムを改修するとともに、業務委託先の業者に対して管理体制を強化するよう指導した。

”調査によると、東亜産業は1施設に対し、検査をキャンセルした2人分を含め「全員陰性」と通知したほか、197施設に検査キットを必要数の最大4倍配布していた。ドクターズは検査を申し込んでいない10施設の621人について「全員陰性」と通知し、14施設にキットを過剰送付した。エアトリは1施設に対象者数以上のキットを送っていた。エスアールエルにミスはなかった。”

検査しないのに「陰性」通知・キット4倍配布…223施設で集中検査ミス : 読売新聞オンライン

この東亜産業の研究用検査キットは、これまで街中でもよく見かけてきました。同社はアルコール濃度の低い(56〜59%)ジェルを販売したり、空間除菌グッズを販売してきた会社です。薬剤師の目から見ると、公衆衛生の上では問題に感じる製品が多いのです。同社の空間除菌グッズは消費者庁から優良誤認の措置命令が出ています。

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_200828_1.pdf

このように、過去の行動が問題となっている企業を、どうして行政が採用するのか。政治家や行政のリテラシーにも、問題があるように思います。新潮の記事を引用します。

”地方自治体への「マスク寄付活動」なるものを展開。20年4月には、東京都にマスク100万枚、アルコール入りハンドジェル5万本を寄付し、その目録を手にする小池百合子都知事と東亜産業の一行が記念写真に納まった。実は、宣伝活動の一端を担い、双方を引き合わせたのは、他ならぬ萩生田光一経産大臣だった。”デイリー新潮 カネに振り回される人々のドラマを描く「週刊新潮」の連載コラム「MONEY」より

コロナ特需の「東亜産業」 偽「残留孤児」が売るサプリ「5-ALA」に“残留毒物” 特許侵害の指摘も(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

厚労省認可の抗原検査キットのネット販売が解禁になり、よりスムーズに入手できる環境になることを望みます。

 

もう一つ、市販薬ではないですが、大きなニュース。厚労省が零売について通知を出しました。従来の方針を踏襲しているのですが、サブスクは不適切であることや、広告文言も今巷で使われている次の表現は不適切であるという内容です。

「処方箋がなくても買える」「病院や診療所に行かなくても買える」「忙しくて時間がないため病院に行けない人へ」「時間の節約になる」「医療用医薬品をいつでも購入できる」「病院にかかるより値段が安くて済む」

https://www.mhlw.go.jp/content/000974058.pdf

色々な意見があると思います。真面目にしっかりやっている店もあるでしょう。ただ、そうではない店もあります。