『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

緊急避妊薬パブコメ4万6000件という数字【2023/5/1~5/5のニュース】

今週はゴールデンウィークでしたね。世間はおやすみモードなので、新商品情報は見当たりませんでした。

海外はどうでしょうか。

米国では経口避妊薬を市販薬として販売する話が出ています。製薬メーカーは昨年夏に申請しており、そろそろ承認するかどうかの決定が下される時期かと思います。
www.reuters.com

昨年のフォーブスジャパンの記事によると、経口避妊薬はすでに100カ国以上で処方箋なしで販売されているそうです。また、米国では、経口避妊薬の市販薬としての販売に、医師会、産婦人科学会、家庭医学会などが賛成しているといいます。米国では中絶を禁じる規制があるという事情も影響しているのかもしれません。とはいえ、医師会側が避妊薬の市販薬販売に賛成しているという事実は個人的には意外でした。

forbesjapan.com

というのも、日本は、この種の薬の市販薬販売については、医師側からの反対が大きいからです。ここ何年も日本で議論になっているのは、緊急避妊薬の市販薬販売の是非です。緊急避妊薬とは、妊娠を避けるために継続的かつ計画的に服用する経口避妊薬とは異なり、性犯罪などにあった場合に緊急的に飲む避妊薬です。

日本では緊急避妊薬を市販薬として、処方箋なしで販売すべきであるという議論が続いています。この議論について、昨年から今年にかけて募集されたパブコメに寄せられた意見は4万6000件でした。パブコメとは、行政が政令などを定める際に国民から広く意見を募ることで、公正さや透明性を確保するためのものです。市販薬に関わるパブコメで4万6000件という数字は、私の感覚からすると驚くべき数字です。過去の、あるいは最近の、業界内で比較的関心の高いと思われる話題に対して寄せられたパブコメは、これよりもはるかに小さい数でした。

2008年に市販薬のネット販売の是非をめぐるパブコメに寄せられた意見は、2300件ほどでした。

医薬品の通信販売規制、97%が「反対」意見――パブコメ結果 - ITmedia NEWS

また、昨年に実施された、市販薬の濫用規制に関するパブコメは(私も意見を出しました)、わずか30通40件でした。

https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001018141.pdf

このことからも、緊急避妊薬の市販薬販売の是非がいかに広く、あるいは深い(この問題に取り組む運動家もいます)問題であるかがうかがえます。

しかし、問題を語ることの難しさからか、当事者になるはずの、薬局界隈、ドラッグストア界隈、薬剤師界隈では、それほど議論が活発になっている印象はありません。もしその印象通りであるならば、これは自戒を込めて、残念なことだと思います。