うんちを出してやせるのか?
あるとき、友人から「ナイシトールでやせるのって、食べ物を吸収させないで便として出すからなんでしょ?とんでもない薬だね」と言われたことがあります。
ダイエット薬として知られている「ナイシトール」は、「防風通聖散」という漢方薬です。本来の目的は体重を減らすものではないのですが、市販薬ではしばしばダイエットの薬として利用されています。このナイシトールが食べ物を吸収させずに、うんちとして体から食べ物などを出すことでやせるというのは本当なのでしょうか?
ナイシトールを飲むと、便が増えて、便の中の脂肪の量も増えることを示すネズミを使った研究結果が最近「Journal of Ethnopharmacology」という専門誌の電子版に掲載されました。こちらです↓
研究の内容はメーカーのサイトで紹介されています。それによると、
1.防風通聖散は糞便量を増やす
2.防風通聖散は便中への脂質およびコレステロールの排泄量を増やす
ということが研究で示されたそうです。一見すると、ダイエットに良さげな情報です。小躍りして買ってよいのでしょうか。
ちょっと立ち止まって考えてみたいと思います。そもそも、うんちの量が増えると、体重は減るんでしょうか。漢方薬に詳しい医師の南澤潔さん(亀田総合病院 東洋医学診療科部長)によれば、通常のうんちは数百グラムなので、うんちが出ようが出まいが、たいして体重には影響がないといいます。
果たして、便が出れば体重が減るのでしょうか?残念ながら排便前後の体重変化はせいぜい1kg、通常は数百g程度でしょう。ぜひご自分でもお試しください(^^) 排尿でも300~400g減ります 痩せ目的の下剤乱用に注意を! | 漢方薬 | 薬剤師情報サイト ファーマトリビューン(PharmaTribune))
でも、うんちがどんどんでれば、多少は体重は落ちる気がします。幸い、実際に防風通聖散を飲んでどれだけやせるかを調べた実験がいくつかあります。そのひとつはこちら(東方医学2012)。
http://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/090004.pdf
防風通聖散を2か月飲んだ人たちと、飲んでいない人たちを比べたら、飲んだ人たちの体重は0.8キログラム減り、飲んでない人たちは0.1キログラム減った。防風通聖散を飲んだ人たちの方が体重がより減ったという内容です(RCT)。この体重差が大きいか小さいかは、人によって判断が分かれると思います。
医学論文というのは一つの結果でなにか確かなことが言えるということはなく、たくさんの研究が積み重なってようやく確かと思われるようなものが見えてきます。だからこその結果だけで「防風通聖散はやせる!」とは到底いえないのですけど、防風通聖散を2か月飲んでも0.8キログラムしか減らなかったというのは、南澤さんの「排便後の体重変化はせいぜい1キロ」という記述となんとなく整合性は取れるような気がします。
やせないとも言いきれないけど、やせると自信満々にもいえない。そんなところでしょうか。防風通聖散の効果について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。明日へ続きます。