『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

書籍発売記念、ツイキャス御礼と感想。薬剤師にとっての市販薬とは【2021/6/21~6/25のニュース】

今週24日に発売した週刊新潮に、私の短いエッセイと、『その病気、市販薬で治せます』の紹介がモノクロ1ページで掲載されております。

店頭で欠品中のタイレノールを購入しようとしたお客さんに、同じ成分のほかの製品があることを伝えると、「あなたを信じるわ!」と、まるで清水の舞台から飛び降りるような気持ちで購入される。こんなふうに、成分よりも知名度で選ばれてしまうような、いまの市販薬市場のエピソードを書いてます。よろしければ書店でお手にとってみてください。

また、本日27日の日経新聞にも広告が掲載されておりますので、仕事が忙しくて受診するのが難しいビジネスパーソンにもぜひお読みいただきたいと思います。

発売から1週間。アマゾンでは星4.8、レビュー数6、コメント4。ご評価、コメントくださったみなさま、本当にありがとうございます。頑張って書いた甲斐がありました。

ツイキャスの感想

さて、週末は、SNS上でお付き合いのある薬剤師さんたちが、ツイキャスで出版をお祝いしてくださり、拙著について色々ご感想などをお話しいただきました。私はコメントだけの参加で、もっぱら聞いているだけではありましたが、とても勉強になりました。なるほど、と思ったことが、たくさんありました。

保険薬局と市販薬の乱用

その一つが、保険薬局の場合、市販薬の乱用者に会う機会が少ないということ。これはその通りだと思います。最近でこそ市販薬を一通り置く薬局が増えてきたと思いますが、それでもまだまだ、利用者にとって「薬局で市販薬を買う」という意識は薄いといえます。その上、顔を覚えられやすい薬局での頻繁な購入は、買う側に心理的な抵抗感を抱かせますから、自分で飲みすぎだとわかっている人ほど、薬局での購入は避けるのは当然のことだと言えます。

逆に、ドラッグストア勤務経験者であれば、市販薬の乱用と思われる購入を目撃することは、それほど珍しいものではないはずです。遭遇率は土地やそのお店の売価(当然、頻繁に買う人は、できるだけ安い店に行くでしょう)に左右されることがあると思いますが、誰でも一度くらいは見たことがあるのではないでしょうか。乱用者が実在すること、そこへの問題意識の差は、薬剤師間でも、私が想像するよりも大きいのかもしれないと思いました。

 市販薬販売におけるオンライン資格確認の有用性

ツイキャスでは勉強になるご質問もいただきました。業界サイトの菅原さんからの「オンライン資格確認に市販薬を入れて、何度も購入することを防ぐという手はどうか」という主旨のご質問です。オンライン資格確認については勉強不足なのですが、私としてはかなり有効的な方法であるという印象です。乱用防止の観点はもちろんのこと、こうしたシステムがあれば、緊急避妊薬の問題も、かなり前進するのではないかと個人的には思っています(今懸念されていることの一つは、”緊急”であるはずの避妊薬が、頻回使用されるのではないかというものだと理解しています)。

一方、紙であろうと電子であろうと、購買履歴を確認しながらの市販薬販売というのは、実際にやったことがある人であればご存知だと思いますが、これは色々な意味で相当タフな業務になりますので、現場はそれなりに苦労することになります。それでも、大いにやる価値はあるはずですので、そこは販売する側が業界をあげて頑張っていくのが良いと考えています。もう一つの重要な課題としては、こうしたデータの紐付けが、利用者にどのようなメリットを与えられるかという点です。乱用防止や販売管理が容易になることは、販売者側のメリットであり、利用者のメリットではありません。利用者からすると、個人情報を抜き取られるわけですから、販売者側の都合だけでは賛同は得にくいと思います。

ちなみに、米国で薬剤師になるぽんさんによれば、運転免許証にバーコードがついていて、それをスキャンしたあとに指定の市販薬をスキャンすると、購入履歴データが記録され、購入可能量を超えるとアラートが出るそうです。

 

薬剤師はどこまで市販薬を学ぶといいか?

それから、ツイキャスを聞きながら、薬剤師が持つ市販薬の知識は、個々の薬剤師の業務環境に大きく左右されるということを、改めて感じることができました。拙著をお読みいただき「知らないことがたくさんあった」というありがたいお声を薬剤師の方からもいただきましたが、これは当然と言えば当然で、日々の業務には優先順位がありますから、病院の薬剤師が市販薬についてたくさんの時間を割いて知識を得る必要はありませんし、いってみれば薬局薬剤師だって、薬局によっては市販薬の知識がほとんどいらない職場も多々あると思います。それほど薬剤師の仕事というのは、多様なものであり、求められる知識や技能もまた多様であると理解しています。

ですから、「これからの時代、すべての薬剤師は市販薬について詳しくなければいけない!」などとは私はサラサラ思っていませんで、そこは、必要な時に必要な情報にアクセスできる環境があり、そして、市販薬の性質について頭の片隅に入れておいていただければ、それで良いと思っています。

とはいえ、薬学的な情報にアクセスするだけでは、市販薬という商品をうまく語ることはできません。例えばですが、医療用医薬品において自分が不得意とする領域の医薬品の添付文書(情報)をいくら読んだところで、その領域における薬の使い方や実践方法を捉えることはできないわけですが、これは市販薬も同じでして、成分だけを見ていては、どんなユーザーがどんな環境でその薬を利用し、現実世界にどんな利益と不利益が生じているか、といったこの現実の社会を立体的には捉えることはできません。このたび発売した拙著「その病気、市販薬で治せます」は、一般の方々に市販薬の魅力や適切な付き合い方を紹介した本ではありますが、薬剤師の方々におかれましては、市販薬ワールドを少し立体的に捉える、一つの手がかりとしてお読みいただけたらとてもありがたいと考えています。

ツイキャスでお祝いしていただき、ありがとうございました。

 

・・・さて、最後になりましたが、今週のニュースです。インパクトのある限定品が23日、発売となりました。小林製薬の「アンメルツヨコヨコ」のウルトラマンデザインの限定品です。どちらも55周年ということでコラボしたようです。見た目のインパクトが尋常じゃありません!

数量限定品:『アンメルツ55周年 ウルトラマンコラボ』│2021年│ニュースリリース│小林製薬株式会社

すごいですね。