『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

日本流風邪薬の象徴「コルゲンコーワLX 錠」が発売【2023/10/2~10/6のニュース】

これほど”日本らしい”風邪薬も、そうそうないでしょう。ロキソニンの鎮痛成分を用いた総合風邪薬「コルゲンコーワ LX 錠」が10月2日発売されました。購入するには薬剤師による対面での安全確認が必要な「要指導医薬品」です。

https://www.kowa.co.jp/news/2023/press20231002.html

解熱鎮痛薬のロキソニンと同じ成分であるロキソプロフェンを配合し、さらに咳止め、鼻水止め、痰を出しやすくする成分などを盛り込みました。ロキソニン並みの解熱鎮痛効果を持ちながら、風邪の諸症状に効果のある成分も入った、国内初となるオールインワン風邪薬です。

実に日本らしい風邪薬だと思います。その理由は、第一に、風邪の諸症状に対応するために、たくさんの成分を入れていること。6種類の成分配合です。海外の風邪薬は1〜3種類が一般的です。これはいろいろな考え方があるので、一概に日本流が悪い、というわけではないのですが、日本らしいという意味では間違いないでしょう。

次に解熱鎮痛成分がロキソプロフェンであること。ロキソプロフェン(ロキソニン)は日本ではメジャーなですが、海外ではマイナーです。たぶん、米国とかで聞いても、なにそれ?というレベルでしょう。性能の劣る薬というわけではないですけど。

世界中探しても、多種成分&ロキソプロフェンを使った「コルゲンコーワ LX 錠」と類似の薬は見つからないと思います。日本の風邪薬はかなり複雑な成分構成で、独自の路線を進んでいます。咳や鼻水の症状がなくても、体調が悪ければとりあえず風邪薬を飲むという人は珍しくないでしょう。本来不要な成分も、よくわからないまま、まとめて摂取するのが日本流です。この状況を下支えしているのは、日本のヘルスリテラシーの低さでしょう。

参考:日本のヘルスリテラシーについて「Comprehensive health literacy in Japan is lower than in Europe: a validated Japanese-language assessment of health literacy」

https://bmcpublichealth.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12889-015-1835-x

 

そのほかの話題にも触れておきましょう。今週は新商品やリニューアルの発表ラッシュでした。どかっと紹介していきます。まず、ツムラの漢方シリーズに3種類が10月6日に追加。ツムラのラインナップが増えるのは、とーっても珍しいんです。今回追加されたのは次の3種類です。

①潤腸湯

②人参養栄湯

③麻子仁丸

このうち①と③はどちらも便秘の薬です。漢方の便秘薬は、若い人向け、元気な人向けのものが多いのですが、この2つは高齢者や体力が低めの人向けの便秘薬です。どちらもおおむね、似たような使い方だと思います。この2つをしっかり使い分けられる人は、かなりの漢方通なのでは。②は倦怠感、疲労感などに。こちらも体力低めの人向けです。今回登場した3つはいずれも、どちらかというと、体力が低め、虚弱、あるいは高齢者向け、という漢方薬になります。

https://www.tsumura.co.jp/newsroom/topics/2023/10061500.html

続いて、小林製薬から、”勃起力などが気になるメンタル不調が続く方に”「メンタフ」が10月11日発売。なかなかすごいフレコミ&ネーミングです。こちらは「桂枝加竜骨牡蠣湯」という漢方薬です。体力が低めの人の不眠や精神安定に使う漢方薬です。メンタル回復で、勃起力も回復ということなのでしょうか?そんなにうまいこといくかなあ。そして、この薬の効能効果には、勃起力改善という文字はありません。あくまで、メンタルを整える、そのサポートという位置付けです。

https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2023/20231004/

第一三共ヘルスケアが「エージーアレルカット」を9年ぶりにリニューアル。いくつかの点が、少しだけ変更されています。

https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/release/ag_allercut231003.html

佐藤製薬が「パスタロンM20α」を10月6日発売。「パスタロンM20」のリニューアルで、皮膚の乾燥を防ぐγ-オリザノールが追加配合されました。尿素20%配合した、乾燥によるカサカサ、ザラザラした肌を滑らかにする塗り薬です。

https://www.sato-seiyaku.co.jp/newsrelease/2023/231006_2/

 

最後に、先週になりますが、全国の病院の薬の供給不安が深刻で、厚労省が全国の医療機関に対して咳止めなどの処方する量を最小限にするように呼びかけたという報道がありました。病院の薬の品不足に引きずられて、市販薬でも咳止めなどが不足しています。年単位でずっとです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA294MS0Z20C23A9000000/

 

それではまた来週。よい3連休を。