規制緩和を目的としたワーキンググループで、参加者である有識者側が「規制強化」を主張し、行政側(厚労省)が「現状維持」を主張するという、かなりちぐはぐな珍事が起きました。
21日に開催された内閣府の規制改革推進会議のワーキンググループ「第5回 健康・医療・介護ワーキング・グループ」でのことです。毎週のように報じられている、市販の濫用問題に関する議論の一コマで、それが起きました。
https://www.youtube.com/watch?v=0Um0cnDM1Oc
資料などはコチラ:https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2310_04medical/231221/medical05_agenda.html
発言者の一人は、沖縄県立中部病院の高山義浩医師。そしてもう一人は、医師免許を持ち医療政策が専門の米国UCLA准教授の津川友介氏です。
お二人の話をまとめると、風邪薬による対症療法を否定するわけではない、しかし現在の成分はリスクははっきりしているのに、効果のエビデンスは不明瞭であり、その成分である必要性が低く、代替成分もある、というものです。そして、「どうやって安全に売るかばかりを考えて、ビジネスのためではないか、という疑念すらちょっと感じてしまう」と踏み込む高山医師。
この意見を受けて、座長の一橋大学の教授(この座長、厚労省のダブルスタンダードを指摘しながら、めちゃくちゃ突っ込んできます)は、
「安全に売るというよりも、そもそもその薬その成分売っていいの、有効性は限られているのにリスクの方が高いよね、そういう話だと思います。代替薬もあるから、そちらを促したほうがいいよね、それは当然の指摘だと思います」
と引き取った上で、「これ、どう思います?」と厚労省に意見を求めました。それに対する厚労省は、しどろもどろ。
さらに津川氏は、風邪薬では死亡が出ている、風邪薬を飲まなかったことで死亡は起きない、という点を挙げて、厚労省のスタンスをあらためて質問。厚労省は「科学的な議論が必要」と返しましたが、かなり苦しい言い分でした。追い討ちをかけるように、内科医の佐々木 淳医師が「厚労省さんが風邪薬効くんだってことを主張されていて意外なんですけど・・・」と感想を述べた上で、風邪に対しては代替品(アセトアミノフェンや龍角散喉飴など)もあるのだから、一旦、緊急停止して検証してもいいのではないかと提案しました。
控えめにいって、医師たちによる厚労省激詰めの場に見えました。もちろん、医師の方々は詰めているつもりはなく、質問は穏やかなものです。ただ、それに対する厚労省側の対応が、あまりにしどろもどろのため、一方的に見えてしまうのです。
詰められているのは厚労省ですが、問題の市販薬を販売して利益を挙げてきた市販薬の業界団体も同じでしょう。たまたま、厚労省が集中砲火を浴びる場になっただけです。
私も販売側です。風邪薬を積極的に勧めることはないですが、店頭で風邪薬を購入しに来た全てのお客さんに、なぜ風邪薬を積極的に勧めないのかを一から説明するのは、非常に困難です(だからせめてもと、書籍で風邪薬の成分のメリットデメリットを書いたわけですが・・・)。
自分自身に責任がないとは言いません。末席を汚してきた者として、是非これを機会に、上流から変わっていくことを期待しています。
一方、18日には厚労省で「第11回医薬品の販売制度に関する検討会」でした。こちらでもさまざまな議論が交わされたようです。
2023年もそろそろ終わりそうですが、2024年も市販薬には大きな変化の波が押し寄せそうです(と毎年書いている気がしますが・・・)。