2023年は節目の年でした
今年最後のブログ更新です。今年もありがとうございました。今年は二度目のニッポン放送ラジオへの出演に始まって、最後は市販薬販売の現場を離れることになりました。しかし、市販薬情報の発信はこれからも続けていきます。来年からは色々挑戦していきます。私にはちょっとした夢があって、それに向けて少しずつ歩みを進めています。
それでは今年もいってみましょう、2023年の市販薬ニューストップ10!これを読んで2024年も快適な市販薬ライフをお送りください!
10位 「カロナール」が市販薬に登場する!?
病院で処方される解熱薬でお馴染みの「カロナール」ブランドが、市販薬として登場しそうという、4月の話です。発売は確実。年内に発売すると思われましたが、音沙汰のないまま年末を迎え、発売は来年のようです。処方される薬よりも一回摂取量が少ないとはいえ、この薬が発売すると、”病院の薬が市販薬で買える”という認知がさらに広がるでしょう。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/04/16/111500
9位 大手薬局チェーン「日本調剤」が550円均一市販薬を発売
日本調剤が自社ブランドの市販薬を開発し、5月から550円で販売開始しました。その特徴は、なんといっても安さです。たとえば、ガスター10と同じ成分の薬が550円(12回分)で購入できます。これは驚異的な安さです。町のドラッグストアで同じ成分の薬を買おうとしたら1000円くらいはするでしょう。安価に出回っているネット通販でも、おおむね600〜700円の間です。日本調剤の市販薬は、まさに価格の破壊者です。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/05/27/213000
8位 ユニーク漢方が続々。個人的ナンバーワンは・・・
今年もユニークな漢方が多数発売されました。小林製薬から「コエキュア」「ゴホナース」「メイマック」、ツムラから「潤腸湯」「人参養栄湯」「麻子仁丸」、そしてクラシエからは珍獣レベルで珍しい「滋腎通耳湯」です。しかし、今年一番の話題の漢方を一つ選ぶなら、個人的には小林製薬の「メンタフ」です。パッケージに大きく書かれた「勃起力」の文字。そう、精力向上を狙った薬です。手に取るのがちょっと恥ずかしそうなパッケージですが、大手ドラッグストアでは、発売早々、ポップをつけて訴求してました。薬の中身は「桂枝加竜骨牡蠣湯」という漢方。しかしご注意を。効能効果にはどこにも「精力増強」とは書かれていません。理屈はこうです。この漢方薬は焦りや不安をやわらげて神経質を改善する。そうすると、ストレスが原因で精力減退していた体が元に戻る。だから、勃起力が気になる人向けというわけです。桂枝加竜骨牡蠣湯自体は、さほど珍しい漢方薬ではありません。訴求の仕方が斬新、という新商品です。
7位 たった1回使用で済む膣カンジダ薬がネット販売解禁
市販の腟カンジダ薬は、6日連続で使用するものが多いのですが、「メンソレータムフレディCC1」(イソコナゾール硝酸塩600mg)は1回だけで済むタイプ。この薬が1月に要指導医薬品から第一類医薬品に移行し、ネット購入が可能になりました。女性にとっては便利で実用的なニュースだと思います。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/01/22/110000
6位 目薬「ヒアレインS」がネット購入可能に
乾き目の目薬として、病院でも処方される「ヒアレイン」の市販薬バージョン「ヒアレインS」が、9月にネット購入可能になりました。要指導医薬品から第一類医薬品に移行したためです。医療用と同じ成分ですが、注意点としては、ドライアイの診断を受けている人は、市販薬は使わないようにと薬の説明書に記載があります。受診して医師の診断のもとで治療してください。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/09/17/214500
5位 生理痛向けの新しいロキソニンが発売
3月に「ロキソニンSプレミアムファイン」が発売。生理痛向けとして芍薬とヘスペリジンを配合した新商品です。ロキソニンシリーズも今や全5種類。区別かついている利用者はあまり多くないように思います。こんなに増殖して大丈夫かな・・・?
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/03/10/220000
4位 日本初で世界初かも!?ロキソプロフェンの風邪薬が登場
ロキソニンの鎮痛成分を用いた総合風邪薬「コルゲンコーワ LX 錠」が10月に発売。ロキソニンは元々第一三共ヘルスケアの製品で、同社も同様のコンセプトの風邪薬を発売する準備を進めていましたが、先に発売したのはコーワでした。ロキソニン並みの解熱鎮痛効果を持ちながら、風邪の諸症状に効果のある成分も入った、国内初となるオールインワン風邪薬です。ロキソニンが海外であまり使われていないことを考えると、世界初の可能性もあります。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/10/08/180000
3位 ついに小学生にも被害。広がり続ける市販薬の過剰摂取問題
メジコンProをはじめとする市販薬の過剰摂取が、連日のように報道されるようになりました。ついに先日は、都内の小学校で女子児童がオーバードースしたという衝撃的な記事も。詳しくはこちらのエントリーをご覧ください。社会問題として年々深刻化しているように思います。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/11/26/103000
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/12/16/204554
2位 男女必見!緊急避妊薬の販売がついにスタート
ついに、という感じです。処方箋なしでの緊急避妊薬の販売が始まりました。試験運用のため、一部の薬局でのみ販売となっています。男性も女性も知っておくべき情報です。詳しくはこちらをご覧ください。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/12/03/110000
1位 風邪薬は1人1点まで!新ルールがスタート
市販薬の濫用問題が深刻化する中で、ついに風邪薬は一度に1人1点までしか購入できなくなりました。まだまだ知らない人も多いと思います。ご注意ください。
https://drugstore.hatenablog.com/entry/2023/03/31/223000
翻訳家からのメール
振り返ってみると、市販薬のオーバードースが社会問題として認識され、そして規制が強化された年だったと思います。厚労省の有識者会議でも何度も俎上にのりました。
そんな師走に、私の「ファン」とおっしゃってくださる人から、一通のメールが届きました。翻訳家のかたでした。どんなお仕事をされているのだろうとググってびっくり。私の家の棚あるいはkindleに収められている、お気に入りの海外書籍(ちなみに薬学ではなく、小売業のビジネス書)の邦訳を手がけた人だったのです。
メールの内容はこうです。
最近、過剰摂取の意味で「オーバードーズ」という言葉が使われていますが、本来の発音はオーバードース(overdose)。濁音をつけるoverdozeだと、冗談で「居眠りのしすぎ」を意味することもある。
そうなのか。翻訳を生業とされておられるかたの、たいへん含蓄のあるご指摘だと思いました。私自身、初めてオーバードーズという言葉を聞いたときは、「なんでスではなくズなんだろう?」と不思議に思った記憶があります。私は日本語の「オーバードーズ」はそれ自体が独自の意味を持つ言葉だと捉え、 界隈で使われるスラングとしての「オーバードーズ」であると認識しています。なので、オーバードーズという表現が全ておかしいとは考えていません。メールを送ってくださった翻訳家のかたも、議論をふっかける気は全くなく、プロとしての視点から「こういう意見もある」として助言をくださったのでした。でも、おっしゃる通りですよね。ちょっとヘン。
そこで、私はこの翻訳者のかたのご助言に従うことにしました。今後は自分のブログでは原則として「オーバードース」と表現したいと思います。国内で深刻化する「オーバードーズ問題」(スラングとしての表現)と、過剰摂取の「オーバードース」とを分けて使います。
こうした交流があると、ブログを続けて良かったと感じます。
おかげさまでブログは今月、開設丸9年を迎えました。
これからも精一杯頑張っていきます。
来年もよろしくお願いします。
それでは、良いお年を。