飲むタイプの痔の薬「プリザ Gカプセル」が、大正製薬から10/1に発売されると発表されました。非常にユニークな商品なので紹介します。
https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20240925001703.html
特徴①有効成分が「メリロート」
プリザGの有効成分はメリロートです。ビックリしました。メリロートといえば、サプリメントの成分として有名だからです。
お店でよくみかける商品としては、DHCのサプリがメジャーでしょう。
メリロートはマメ科のメリロート草の抽出成分です。歴史はギリシャ時代まで遡るほど古く、マホメット教(イスラム教)の間で愛用されたと言われています。日本では数年前まで「タカベンス」というメリロート成分の医療用医薬品が流通していました。タカベンスの製品資料(IF)から引きます。
メリロートエキスは、ギリシャ時代から医薬品として常用されていた。次いで愛用していたのは、マホメット教徒である。ペルシャ湾からボンベイに輸出され、その関係からイギリスにおいても医薬品として常用された。 マホメット教地域では、排膿性と収斂性があることから、腫物やしもやけの治療に用いられた。イギリスでは香料、駆虫剤として内用され、また、罨法、パップ剤として鎮痛の目的で外用された。このように民間薬として広く使用されていたメリロートエキスの主成分についても研究され、この頃からメリロートエキスは、 医薬品として注目されるようになった。 1959 年に、植物療法に関心をもっていた Becker がはじめて、メリロートエキスを製剤として使用することを試み、その後市販されるようになった。 当社では、メリロートエキスの単剤を開発し、1970年3月に製造承認を得て、同年8 月より発売してい る。
残念ながらタカベンスは販売終了しています。
メリロートは血流改善と炎症を抑える効果があるとされています。いぼ痔は静脈血の一部が溜まる(うっ血)ことで炎症が起きて腫れ物ができます。メリロートの薬効は、うっ血による炎症を抑えることで、いぼ痔の改善が期待できます。
メリロートサプリの肝障害
ところで、メリロートといえば、医療従事者の間では、ある事件を思い出す人がいるかもしれません。日本で起きたサプリメントのメリロートによる肝障害です。4ヶ月飲み続けた20代の女性に肝障害が起きました。メリロートは適正量であれば問題ないのですが、サプリメントは製品によって成分量がバラバラ。2016年に国立健康・栄養研究所の室長によって書かれた記事を紹介します(※2)。
日本で使用されている医薬品のメリロートエキスの1日服用量は75~300mgであるのに対し、「健康食品」に表示されている1日当たりの摂取目安量に含まれるメリロートエキスの量は30~337mgであったこと。また、それらの医薬品または「健康食品」に含まれるクマリン量は、医薬品で0.4~4.0mgであったのに対し、「健康食品」では0.03~19.7mgであったことが報告されています。これらの結果より、「健康食品」の中にはクマリンがほとんど含まれていないもの、または、1日摂取目安量のクマリンが医薬品の服用量を超えるものが販売されていることが分かります。また、これらのメリロートを含む「健康食品」を使用することで、医薬品より高い生理作用(副作用)が表れる可能性も考えられます。
DHCは今月からリニューアルで成分減
実際、今回発売した医薬品の「プラザG」がメリロートエキス150mg/日に対して、DHCのサプリメント「メリロート」はメリロートエキス末200mg/日と、医薬品よりも多いことがわかります。
ただ、現状は変わりつつあるようです。というのも、DHCのメリロート製品は今月リニューアルされて、エキス量が67.5mg/日と大幅減量になったのです。同社の公式サイトは、変更の理由をこう説明しています
令和6年3月11日に「錠剤、カプセル剤等食品の製品設計に関する指針(ガイドライン)」が発出されました。 当社ではガイドラインに準拠して処方をリニューアルし、2024年9月5日(木)に「メリロートPlus」として発売いたしました。 なお、お客様におかれましてはパッケージに記載の一日摂取目安量を守ってお召し上がりいただくようお願いいたします。
サプリのメリロート成分量が大幅に減ったことと、メリロートの薬が新発売したことは、偶然なのか、良きタイミングなのか、と思いつつ、ともかく、用法用量は守りましょうという話です。
ちなみに、サプリメントのメリロートは足のむくみなどが気になる人向けを醸しています(明確に記載することは広告ルールに逸脱する)。数年前にSNS(X)上で、メリロートは「リンパ浮腫診療ガイドライン」でも使わないように推奨しているという医師の投稿がありました。ちょうど今年、改訂された最新の同ガイドラインを確認すると、大きく紙幅を取ってメリロートについて解説されていました。ガイドラインの記載は、リンパ浮腫に対して効果があるとないの両方の研究結果があるが、肝障害があるので推奨はしないということ、米国ではそのため使われていないこと、ただし、有効な人もいるのでうまく活用する余地はあるというニュアンスでした。いずれにしろメリロートの使用に一定の注意が必要なことは確かでしょう。
なお、付け加えると、「リンパ浮腫」(蛋白成分過剰)と一般的にむくみと称される「浮腫」(水分過剰)は異なる病態であり、メリリートは蛋白分解作用があることを差し引くと、足のむくみとガイドラインはわけて考えた方がいいのかもしれないという印象です。
特徴②飲むタイプの痔の薬
話をプリザGカプセルの特徴に戻します。2つめの特徴は、カプセルタイプであることです。飲んで治せることは、痔持ちにとって福音でしょう。
痔の薬の2大ブランドは「ボラギノール」と「プリザ」です。どちらの製品も、そのほとんどが、お尻に塗って治すタイプの薬です。手を汚さず、場所も選ばない飲み薬は貴重な選択肢です。
飲んで治すいぼ痔薬といえば、小林製薬の「ヘモリンド」が有名です。ヘモリンドの成分は「静脈血管叢エキス」。これは「主に動物の血管のたんぱく質を分解したもの」なので、成分はプリザGとは異なりますが、薬効作用は似ています。
「プリザ」シリーズのライバルである「ボラギノール」からは、飲むタイプが2種類出ています(※3)。「ボラギノール内服 当帰建中湯」と「内服ボラギノールEP」です。当帰建中湯は漢方薬で、「小建中湯」という消化器を建て直す薬に「当帰」という成分を加えたものです。女性の生理痛などに適しているとされていますが、痔にも使うことができます。
ボラギノールEPは、ボタンピやシコンなど、血流改善・抗炎症作用のある成分が使われている薬です。どちらが適しているかは人によりますが、ボラギノールEPのほうが、痔の症状にはより直接的に効くと思います。
特徴③「切れ痔」には使わない
プリザGカプセルは「イボ痔」の薬です。「切れ痔」ではありません。いぼ痔は血流の問題ですが、切れ痔は硬くなった便などが原因で切れることで起きます。痔の種類によって使う薬が異なるので注意が必要です。
切れ痔向けの飲み薬には、「乙字湯」という漢方薬があります。こちらはダイオウなどの便秘解消成分が入っているため、便が柔らかくなることで切れ痔の悪化を抑えられます。裏を返せば、下痢傾向の人は避けた方が無難な薬ともいえます。
痔もいろいろ、薬もいろいろ。
おもしろいなと感じたら、拙著も併せてお読みいただけますと幸いです。
※1 インタビューフォーム https://www.takata-seiyaku.co.jp/medical/product/t_2553/if_t-2553.pdf
※2 https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20161122-OYTEW189706/
※3 プリザブランドのサイト https://www.borraginol.com/products/touki/

