『家庭の薬学』

自分に合った市販薬を選びませんか?

都内で流行の「りんご病」。NGな市販薬は?【2024/11/18~11/22のニュース】

今週は都内で「りんご病」が増えているという報道がありました。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000386052.html

東京都によりますと、17日までの1週間で伝染性紅斑、いわゆる「リンゴ病」の1医療機関あたりの患者報告数は「1.93人」で、前の週から約57%増加しました。多くの保健所で患者報告数が「2人」を超え、都は警報レベルに達したと発表しました。

りんご病は、別名「伝染性紅斑」。その名のとおり、周囲に伝染して皮膚が赤くなる(紅斑)病気です。子どもに発症しやすく、ほっぺが赤くなることから日本ではりんご病と親しみのある名が付けられていますが、海外では「slapped cheek syndrome 」(直訳すると、”引っ叩かれた頬症候群"ですね)と、まったくかわいげなく呼ばれています。

特徴的な症状は頬の赤みですが、体にも斑点が広がっていきます。この症状は1週間以内に消失するとされています。年長の小児や成人では関節痛があります。

そして、ここが重要ですが、皮膚が赤くなる症状が出たときには、ウイルスの感染力はほぼなくなっているとされています。りんご病は、皮膚が赤くまる1週間ほど前に、風邪のような症状が現れます。このときが一番、ウイルスが多く排出され、感染力が高くなります。

というわけで、頬が赤くなってりんご病とわかったときには、時すでに遅し。予防策は、風邪のような症状がある人には近づかないこと。飛沫や接触で感染しますので、普段から手洗いなどを徹底すること。ようするに、いつもの風邪対策と同じです。

りんご病はほとんどが自然に治癒します。ただし、妊婦さんは胎児に感染することがあります。胎児に感染してもほとんどの確率で影響はないとされていますが、妊娠初期での感染は悪影響の可能性が高まるとされていますので、昨今の流行下では妊婦さんに注意が必要です。

りんご病はウイルスが原因なので、受診しても抗生物質は処方されません。かゆみや痛みを抑えるような、表面的な症状を抑える対症療法になります。ほとんどの場合で処方されるのは、アセトアミノフェンという解熱鎮痛薬です。

市販薬であれば解熱鎮痛剤が選択肢になります。英国NHS(公的保健サービス)のサイトでは、アセトアミノフェンやイブプロフェンを推奨しており、どちらの成分も日本でも市販薬で購入できますが、子どもにも使えるのはアセトアミノフェンです。

また、NHSのサイトでは「16歳未満にはアスピリンを与えない」と記載されています。これは英国では、りんご病にかぎらず、16歳未満ではライ病などのリスクを考慮してアスピリンを使用しないというスタンスを従来から採用しているためです。

日本でも子供の感染症にあえてアスピリン(アセチルサリチル酸)を使うことはないでしょう。日本ではたとえば市販薬の「バファリン」がこの成分に該当しますが、服用できるのは15歳以上です。

拙著『その病気、市販薬で治せます』にも書きましたが、バファリンは昔から大変有名な解熱鎮痛剤ではあるものの、ほかの鎮痛成分とは使用条件が異なる、”クセツヨ”な薬です。よほどの理由がないかぎり、常備薬の第一選択にはなりません。

 

 

参考

東京都感染症情報センター

https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/fifth-disease/

国立感染症研究所所

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html

NHS

https://www.nhs.uk/conditions/slapped-cheek-syndrome/

BMJ

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1169585/