今週は新商品情報はなし。代わりにこんな論文をご紹介します。
高齢者による「市販の乾燥肌のかゆみ止め外用薬」誤食の危険性―日本中毒情報センターのデータから― 中毒研究. 2024」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjct/37/4/37_397/_article/-char/ja
にわかには信じがたいかもしれません。しかし、起きうるのです。かゆみどめの塗り薬を食べて、重篤な状態になってしまうことが。同センターの報告をみると、毎年数件は発生していると推測されます(34年間で122件)。認知機能の衰えた高齢者で発生します。
たとえば、以下のケース。
認知症のある 80 歳代の女性。デイサービスで職員が離れている間に持参していた本人用のメンター ム EX プラス約 30 g(尿素 3.0 g,リドカイン 0.6 g, ジフェンヒドラミン塩酸塩 0 . 3 g,d-カンフル 0 . 3 g,他)を誤食した。1 時間後より咳嗽を認め,2 時間後に起立困難となり,当院搬送となった。
市販の塗り薬には中枢神経に作用するリドカインやジフェンヒドラミンなどが含まれます。これらの成分によって意識障害などを引き起こされます。上記のケースでは30gを摂取していました。市販の乾燥・かゆみ対策の薬は100〜150gの製品が多いですから、30gというのは誤食する可能性が十分にある量といえます。
医師から処方された薬は厳重に管理されていても、市販薬で日常的に使用する、乾燥・かゆみの塗り薬は、ついつい不用意な場所に置いてしまう可能性があります。とくに高齢者は「老人性乾皮症」などといって、水分が減り肌が乾燥してかゆくなりやすく、塗り薬が欠かせません。
認知機能の衰えたかたがいらっしゃるご家庭では、市販薬の保管に十分ご注意ください。